HP-35のラベルをはがす

この冬に入手したHP-35電卓の裏蓋シールをはがしました。

HP-35は当時のCEOの方針により、中身も美しく設計されています。回路基板はガラスエポキシ基板に金メッキされた配線が走っており、回路基板とキーボード基板の接続もはんだ付けではなく金メッキした端子によるコネクタとなっており、保守がしやすくなっています。測定器メーカーの面目躍如といったところでしょう。

ところが、蓋を開けようとすると大きな障害が一つあります。裏蓋の説明用ラベルがねじを覆っているため、何とかしてこのラベルをはがさなければなりません。ファンの多い電卓ということでHP-35の分解写真はたくさんありますが、ラベルのはがし方を詳細に説明した分解記事は私が知る限り1件しかありません。

ノウハウの多くは掲示板を通じて共有されているようで、なかなかきちんとした手順を探すのは難しいです。なお、上の記事はドライヤーを使って外していますが、掲示板にはイソプロピルアルコールを使ってはがす方法も紹介されています。

ゴールデンウイークを迎えて時間に余裕ができましたので、上記のページを参考にラベルはがしに挑戦しました。

 ラベルはがしの詳細はリンク先を読んでもらうとして、私が行った作業のおおまかな流れは以下の通りです。

  1. ラベルをヘアドライヤーで加熱する。
  2. ラベルの隅にナイフを差し込み、ゆっくりと持ち上げる*1
  3. ねじが露出したらいったん過熱をやめ、ねじを外して蓋を開ける。
  4. 残りのラベルを加熱してはがす。

リンク先には「ラベルの左下隅が一番持ち上げやすい」とありますが、ねじの箇所はラベルの上側とわかっていますので最初から左上隅を加熱して慎重にナイフを差し込みました。

使用したヘアドライヤーは家族が日常的に使っているもので、特に強力なものではありません。昔はドライヤーと言えば金属の筒だったのですが、今はプラスチックなんですね。

加熱はゆっくり落ち着いて行います。ラベルが熱くなってきたところでナイフを差し込むと、意外なくらい簡単に持ち上がります。しかしながら、ナイフを進めていくにつれて接する接着剤が長くなっていくため、抵抗が大きくなります。ここは焦らず慎重に進めます。

ラベルの右上と左上をおおむね持ち上げた写真を下に示します。

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ラベルをはがす途中の写真。画面手前右にゴム足をめくった下のねじが見える。

うかつにも作業前は気づかなかったのですが、ラベルは金属です。ひどい折り目を付けると元に戻せませんのでくれぐれもゆっくりと作業します。

上の写真の状態でドライバーを差し込み、折り目を付けずにラベル下のねじを外すことができました。また、写真では筐体下のゴム足をめくった下にねじがあることがわかります。このゴム脚は接着剤で止めているわけではないので簡単にねじにアクセスできることができます。ゴム足は脱落しにくく、ねじにアクセスしやすい設計になっています。

電池ボックス内部を含めて6本のねじをはずすと裏蓋を開けることができますので、この状態で本体から外して残りのラベルを外してしまいます。本体に装着したまま外しても良いように思えますが、1970年代初期の電子回路ですので、念のためあまり高温にさらさないよう用心しました。

ラベルをはがし切った様子を下の写真に示します。

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ラベルをはがし切った様子

接着剤の材質は不明ですが、感触はボンド17Gに似ています。こうしてみると、どこが剥がし易いということはなく、まんべんなく接着剤が塗布されているようです。

裏蓋に残った接着剤は爪の先でこするだけでたやすくきれいにはがすことができます。

ラベル裏のほうが難物です。接着剤が厚く残ったところは爪で軽くこそげば簡単に剥がれますが、薄いところはそうはいきません。焦って強くこするとラベルがへこみます。

そこで、家にあったロックタイトのシールはがしを塗布してヘラでこそぎ落としました。

このシールはがしが最適かどうかはわかりませんが、接着剤がきれいにおちたので良しとします。

なお、ヘラでこそぐうちに、シールの歪みがおおむね取れたことは予想してなかった収穫でした。

作業を全部終えて蓋を閉めた写真を以下に示します。

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再び蓋を閉めた様子。接着剤はきれいに除去できる。

これで内部にアクセスしやすくなりましたので、また時期を見て分解を進める予定です。この個体は電源スイッチの動作が悪いのでその部分の洗浄のほか、フロントパネルの洗浄も予定しています。

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基板。中央のCANタイプの素子はROM。



*1:デンタルフロスの方が安全だという情報もある

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