心拍数モニタの無線プロトコル

心拍数モニタ(HRM)の無線プロトコルについて調べたのでメモしておきます。

心拍数モニタの無線プロトコルは心拍数センサーとモニター装置の間の通信に使われます。腕時計型モニタの場合はセンサー内蔵型が多いため無線プロトコルがないものもあるかもしれません。

しかし、胸に巻くタイプのセンサーでは一般に無線プロトコルでモニターまでデータを飛ばします。

 

BLE

BLE ( Bluetooth Low Energy )には健康器具用のプロファイルが初めから備わっており、HRM用のプロファイルも含まれるためアプリケーションを簡単に構築することができます。

最近の心拍数センサーにはBLEを内蔵したものが増えました。

利点としては、スマートフォンと簡単に接続できることが挙げられます。スマートフォン側に必要なものは、アプリケーションのみです。これを強みとして、数多くのセンサーがBLEを採用しています。

また、セキュリティに優れ、混信が無い点も利点と言えます。さらに、別プロファイルを利用してセンサーに蓄積したデータを転送する、ファームウエアをアップデートするといったこともできます。

欠点はペアリングが面倒なことでしょう。

ANT+

Germin社の独自プロトコルです。他社にもライセンスが提供されており、多くのセンサーやモニターが採用しています。

Bluetooth同様に2.5GHz帯を使用しますが、一部の例外を除いてスマートフォンとは通信できません*1

ANT+は健康器具に特化した超低消費電力のネットワーク・プロトコルです。おそらくはBLEよりもはるかに単純であり、そのためか自転車のケイデンス・センサーなど、こまごました機器で使用されています。

利点は消費電力が小さく、HRM以外の用途にも使えることです。

欠点はペアリングが必要なことです。

Polar社の独自プロトコルです。民生機器にはあまりライセンスされていないようですが、フィットネスジム用の機器では採用されているようです。PolarはGymlinkプロトコルについてあまり多くを語っていないため、情報を集めるのに難儀しました。

このプロトコルは5kHzの超長波通信を使っており、水中でもデータ通信ができることが特徴です。

Gymlinkには混信対策がなされていない古いプロトコルと、混信対策がなされているCodedと呼ばれるプロトコルが存在します。混信対策がなされていないプロトコルの場合、ユーザーが密集しているとモニターがすべてのデータを拾うため、心拍数がでたらめになります。これは市民マラソンのスタートのような状況を考えるとわかりやすいでしょう。混信対策がなされているプロトコルにはこの問題はありません。面白いことに、混信対策プロトコルに対応した機器と対応していない機器の間でもデータ通信はできます。この辺はPolarの資料には明記されていないのですが、推測した結果を書いておきます*2

センサー モニター 混信対策
標準 標準 なし
標準 CODED なし
CODED 標準 なし
CODED CODED あり

 Gymlinkは非常に古いけれどもまだPolarに在庫があるらしいT31 HRMセンサーで使用されています。これに混信対策を施したものがT31 Codedです。両者はロゴ以外の見かけは全く同じです。そしてPolarの最新HRMセンサーH10でも混信対策済みのGymlinkが使われています。

Gymlinkの利点は、多くのPolar製品が対応していることと、どうやら商業施設で使われているマシンの間で広く使われているらしいことです。また、プールの中でも使うことができます*3

べらぼうに消費電力が低いことも利点です。例えば、Polar T31の電池寿命は2500時間です。1日1時間の運動の場合は2500日間使えることになります。

さらに、ペアリングが不要であることも利点といえます。ジムのマシンを使い始めると、自動的にマシンがセンサーからの心拍数データを認識して表示します。

欠点としてはコストが高めであることと、Polar以外の民生機器ではほとんど目にしないことがあげられます。

おわりに

実は最近ジムに通い始めました。そこでKEISER社のバイクをこいだとき、自動的に心拍数の計測が始まったことに衝撃を受けました。私の胸のセンサーからの信号を受信していたのです。これが、今回の調査のきっかけでした。

私の心拍数計は16年前にボストンで購入したPolar A3ですが、電池交換でいまだに動作しています。センサーのT31は数年ごとに電池切れによるセンサー買い替えが必要ですが、それ以前に消耗品のチェストベルトの在庫が消えつつあることを心配していました。気に入ってるんですよ。

今回の調査で最新型のセンサーであるH10もA3に接続できそうなことがわかり、一安心しています。

 

追記:Polar Gymlinkのフォーマット情報

arduino-projects4u.com

*1:ソニー・エリクソンの製品はある時期対応していた

*2:正しさは保証しない

*3:実はこの点の優位性は失われつつある。最近の機器はデータを蓄積しておいて後でまとめてBLEで転送できる

/* -----codeの行番号----- */