今、時計を見たら朝5:41です。
眠れません。出張に来て1,2日で時差ぼけは抜けるのですが、週の後半に睡眠が破綻することが増えたように思います。前の会社を辞めたあと、運動をしては体を壊し、元に戻ってはまた不調の繰り返し。案外、2年前のあの仕事のダメージをまだ引きずっていて、それはひょっとするともうこれ以上良くならないのではないかと、こんな夜には考えてしまいます。あるいは、単なる老化か。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/09/12
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 125回
- この商品を含むブログ (403件) を見る
ミステリと言うよりもファンタジーに近いかも。
偶然つまらない超能力を身に付けてしまった主人公は、子供のときからの考え癖から、頭角を現し始めた政治家「犬養」が日本をファシズムの渦に放り込んでしまうのではないかと言う仮説にたどり着きます。
ニュースともデマともつかない、米国における侮日事件、中国の舐めきった対日姿勢、ネットの中で繰り返し発生するデマ、外国人排斥運動。淡々と進む日常生活と、キリキリと音を立てて狂い始める民族感覚の間で、ひっそりと水に沈むような考察を進める主人公。
不思議な小説としか評しようがありません。主人公は正義の味方ではなく、突き詰めて言えば、自分の好悪で政治家を失脚させようとしているだけの男です。彼自身の妄想も、小説の中の社会にある「感覚の狂い」と同じ穴の狢であり、この一種夢のような小説を形作ります。
一般民衆には「良い文学」と無批判に(そして、読まずに)評されている宮沢賢治の作品の一部を、ファシズム的であると断じているシーンは新鮮でした。読んでみようかな、宮沢。
後編ともいえる同時収録の「呼吸」では、やはり不思議な力を付けてしまった前編の主人公の弟がのんびりとして安定した生活からゆっくりと滑り落ちはじめるさまを、のんきな妻の視点から描きます。
力さえあれば、誰でも魔王になりうるのかもしれません。