24 太陽の塔

例によって「青春をこじらせた」若者の話。

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

子供のころから磨きに磨いた知性のおかげで誰もが賞賛する大学に入ったものの、無駄に高い知性は自分以外の人間にも価値があるとすることをよしとせず、畢竟、言動も仲間もキテレツになっていく。そういう、よくない「病気」にかかった若者の話です。
この作者の物語りには珍しく、主人公は恋人を持っていたことがあるのですが、二人の関係は悲しくも破局を迎えます。そして主人公は「俺は男らしく堂々とわかれた」と思いたいのですが、一方で彼女が自分のように価値ある男を見限ったことを許せないと思っています。
悲しき自己評価。
自分こそが価値ある生き物であり、それを理解できない人には等しく意味がない。そういう、正しく育てられた市民であれば中学2年生のときに日記の中に捨ててくる自己像を捨てきれないまま、主人公は京都の街を右往左往します。
自分の生きている時間は、自分を見出してくれるのか、それともこのまま埋もれるのか、ひょっとして夢ではないか。そういうことを許してくれる学生時代におぼろげなタイムリミットを感じつつ、主人公は何もできません。できるのは虚勢をはって仲間たちと大言壮語を吐き合うことだけ。その一方で、主人公は自分を捨てた「ものの価値のわからない」彼女の、あどけなく無垢でか弱い姿に抱くいとおしさを捨てられません。
出口も解もない、おそらくは自己評価さえ捨てれば抜け出すことのできる切ない学生時代です。
やや、長すぎるなというのが偽らざる感想です。筆者の硬質で濃い文章は、長編として読むにはあまりにも疲れます。緩急がないせいでしょう。どこへ向かっているかわからないなら、せめて疾走感くらいは与えてほしいのが人情というものです。バケツ一杯分のとんこつラーメンを食べつづけているような気分でした。