偽造キャッシュカードによる引き落としの保障問題

以前から銀行が偽造キャッシュカードによる引き落としをシカトしていた件について、急速に関心が高まっています。

金融庁の勉強会が発表した中間報告を読んでみました。まだ決定ではなくて検討ですが、われわれの生活で参考にすべき点はいくつかあります。

まず、重要な前提として、本物のカードを使って本物のパスワードで預金を引き出された場合は銀行には過失はないとしています。カードを盗難されないようにする資産管理責任は利用者にあるわけです。

偽造カード利用に関するガイドライン

次に、偽造カード利用に関する今後のガイドラインに関する案が列挙されています。以下引用です。

  • 偽造キャッシュカードが使用されたことによる損害は、原則として金融機関が負担。
  • 但し、預金者の責に帰すべき重大な事由がある場合には、預金者が負担。
  • 預金者の帰責事由については、金融機関に立証責任。

ここで「預金者の責に帰すべき重大な事由」とは

  • 不正利用、および調査協力拒否
  • 重大な過失

です。

不正利用および調査協力拒否

まずこの点ですが、「家族」「同居人」「使用人」による不正利用に関しては保障義務がないだろうとしています。つまり、「息子が自分のカードを不正にコピーして使用した」「同棲していた元彼が偽造カードを作っていた」「家政婦が偽造カードを作っていた」といった場合は、利用者に責任があります。トロイの木馬は引き入れた時点で利用者の過失というわけです。
金融機関による調査に協力しない場合や被害の届け出に虚偽があった場合も同様です。これらは制度を悪用した詐欺を防止する意味もあり、警察に対する届出が必須となるでしょう。この点はわれわれ悪意のない利用者にとって問題ではありません。

利用者の重過失

  • 他人に暗証番号を知らせた場合
  • カードに暗証番号を書いていた場合

こんな馬鹿はいないだろう、と思っていたのですが同僚は先輩後輩の間でパスワードを教えていることが発覚*1して唖然。

重過失と認定される要因となるかもしれない点

  • 暗証番号のメモ、あるいはそれを類推されるメモをカードと一緒に保管、携帯した場合
  • 利用者の生年月日、電話番号、住所、職場などから類推できる番号を使っていたとき。
  • 同じ暗証番号を複数の金融機関で使いまわしたとき。

これらは直ちに重過失と認定されるわけではありませんが、そのリスクはあります。裁判が長引き、裁判費用が補償額を上回ることも十分ありえます。事前にわかっているリスクは回避すべきでしょう。
特に最後の項目は打撃の大きな方が多いのではないのでしょうか。複数のカードや口座を持つのが当たり前の時代ですのでそれぞれに異なる暗証番号を与えるのは苦痛ですが、リスクとして覚えておくべきです。

カードの管理

以下の場合も重過失になると考えられます。

  • 安易に第三者にカードを渡した場合
  • カードを盗まれやすい場所に置いた場合

カードを渡すというのはデビットカードのように目の前で使われる場合を除きます。しかし、店の奥にカードを持っていくことをはっきりと断るような自己保全義務が生じると今後は考えたほうがいいでしょう。
また、セーフティロックつきの金庫に入れた場合は、利用者の過失にはならないようです。

通知、保管について

不正に引き落とされたことに気づいたにもかかわらず金融機関に届けなかった場合は重大な過失とみなされます。また、長期間不正引き落としに気づかなかった場合も重大な過失とみなされる場合があります。
自分の資産は日ごろから自分で点検しなさいということでしょう。

感想

おおむね妥当だなと思います。一部「クレジットカード会社は利用料金を取っているが、銀行はカード利用料金を取っていない」などとんちんかんことも書かれていますが、銀行の保障義務が明確化されるのはいいことです。
ここに書いてあることはすべて検討段階なので実施時には変更が加わることになるでしょう。注意してください。

*1:お前らそんな仲だったのか(-_-;

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