東スポの時代

某所で、「これほど老若男女がプロ野球のストについて語っているのに、いまさら『野球に対する関心は低下している』なんて馬鹿じゃないか」という意見を読みました。
それ、間違っています。
みんなが興味をもっているのはプロ野球のストであってプロ野球じゃありません。今回、

  • 半世紀前から進歩していない、まるで自分たち日本の姿を見るかのような泣けてくる老人たち
  • こいつらの年収って東京ドーム何杯分的成金労組

の対立がまな板にのっているのが面白いだけです。世論は選手側を支持しているように見えますが、よくよくみると、比較論として支持している人がほとんどです。年寄りたちの開いた口がふさがらない経営者ぶりの反動として選手が支持されているだけです。野球放送を見ずに選手に声援を送るブログをせっせと書いている人も多いことでしょう。
ネタとしてこれほど面白い茶番はありません。だって銀行の不良債権問題は今後の経済を考えると暗い気持ちになりますが、たとえプロ野球がなくなっても困らないでしょ。一方で本来東スポあたりしか取り扱わないような馬鹿馬鹿しいネタを、大新聞が取り扱っているのですからさぞかし東スポも苦い顔じゃないでしょうか。こういう痛い話に対して大新聞が参入することに反対をしたほうがいいんじゃないかな、東スポは。
読売新聞の社説も「痛々しい」とあちこちで取り上げられていますが、社説を書いた人は巨人ファンなのか、社説としてはそう書いているけど本当はどう思っているのか、読売新聞の労組は巨人軍と連動ストをやる気はあるのかないのかそもそも応援しているのか、そのあたりを考えるだけでわくわくします。
私は楽天ライブドアが参入すると面白いと思っていますがそれは騒動として面白いと思っているだけです。何しろ年齢で言うとライブドアの社長の2倍以上の年寄りもいるプロ野球オーナー会議です。ぽっと出の成金が出向けば揉めるに決まっています。東スポの記事も野球選手のネタよりオーナー会議のネタが多くなるかもしれません。
いまさら「連綿と続いた野球文化の危機」などと言い出す輩もいますが、馬鹿いっちゃいけません。プロ野球は市民野球とつながりがないのですから、あれはテレビショーに過ぎません。市民が参加しない文化がどこにありますか。プロ野球選手が市民や少年少女の間の野球の普及、指導に積極的に参加しない限り、プロ野球が消えても野球文化には傷ひとつつきません。野球好きなおっちゃんたちはいつも通り日曜朝に一試合やってビールをあおり続けるでしょう*1
プロ野球選手会が合併に反対する本当の理由は選手会の公式サイトのページを読んでもよくわかりません*2。おそらくは「嫌だから反対」「雇用確保」あたりが理由でしょう。将来日本でも「年収300万円時代が来る」などといわれているわけですが、晩酌のビールも削らなければならなくなってきたお父さん方にとって、経営破たん状態でも雇用確保を求めてストができるなどうらやましい限りです*3
ところで仮に楽天ライブドアが参入したとして、5年後も彼らが球団経営をしているかというと怪しい限りです。彼らは自分たちの名前をさらに一般に浸透させるためにプロ野球という広告媒体を選んだだけです。その点を批判する人たちがいますが、私には批判する精神構造が不思議でたまりません。本気で野球を愛する心だけで損を承知で救ってくれる大金持ちが現れるのを待っているのでしょうか。あほらし。そんな金持ちは大田区あたりの町工場を救うべきです。
参入を果たしたい企業がいるということはプロ野球にはまだ幾分の経済価値があるということですから、ひとまずいいニュースです。ただ、古田会長をはじめ選手諸氏にはくれぐれも経営改善の努力が求められることを忘れないでいただきたいものです。あなた方は現代産業としてはとうに負け犬なのです。産業構造を改革し、市場を活性化しなければ全員路頭に迷う日も遠くありますまい。参入を希望している会社は、いずれもあなたたちが想像できないほど激しい生存競争を潜り抜けてきた筋金入りの資本主義者達です。オーナー会議の老人たちほど甘くはないのですよ。

*1:同じ意味で門閥化した多くの「伝統文化」は文化として死滅しています

*2:そもそもどこに反対意見が載っているかよくわからない

*3:一応、選手会は一部選手の年棒減額も提示している

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