「対策本部」の正体をさらしてしまった福島原発事故

今回の事故はあまりに深刻であるため、現場での作業を見守ることとし、頭に浮かんだ批判や避難を文字にすることは極力避けてきました。でも、今週我慢の限界を突破してしまいました。福島第一原発事故対策の真の問題は政府の対応にあり、このままだと、いつひどいことになっても不思議ではありません。この政府は即刻解散して、新しい、まともな総理大臣の指導のものとで問題に解決に当たらなければなりません。

連絡機関でしかなかった「対策本部」

兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災以降、災害が起きるたびに「対策本部」が首相官邸に設置される様は、日常の風景のように定着しています。毎度毎度設置されるこの本部は、しかし今回の福島の事故によってその正体を国民の前にさらしてしまいました。対策本部とはその名前に反して連絡網に過ぎなかったのです。それでいままでそこそこ機能していたのは事実かもしれません。しかし、問題がここまで深刻なのに、以前のやり方を押し通していることは、狂気としか言えません。
政府がやっているのは「東電はこう言っている」「原子力保安・安全院はこういってる」「やれることは何でもやれと指示を出した」と発表しているだけで、この国家規模の大事故に、国を挙げて当たろうという意識は全く見えません。

東電の不手際が批判されること自体が異常

問題が発生してまもなく1ヶ月になりますが、たびたび、東電の不手際が批判されています。突然の建て屋爆発、プールに対するあたふたとした給水、あっという間に枯渇した線量計、作業員の深刻な被曝、高濃度の漏水、などなど。しかし、本来、こういった不測の事態にあたふたする状態は、政府の対策の甘さとして論じられなければなりません。
なぜなら、これは国家的な危機だからです。
半径30kmの範囲が屋外待避勧告を受け、多くの県の物産が放射能による汚染で出荷を停止され、さらに風評被害が深刻に広がる中、綱渡り状態で原子炉および核燃料プールをまだ押さえつけられていないという現状は、戦争にも等しい国家的危機です。そうである以上、政府が総力を挙げたバックアップを行うべきなのです、しかしそれが全く行われていません。
私には東電の予想を超えた事態が起きることより、それに対して政府が対応する気が全くない方が遙かに恐ろしく感じます。

全力で当たると言うことがどういうことかわかっていない政治家

これまで何度か、テレビなどに引っ張り出された政治家に対して以下のような問答が行われています。
「これは国家的な危機なんだから、もっと日本の力を結集して問題解決に当たるべきではないのか」
自衛隊や、消防、警察をはじめとして各機関ががんばっている。我々は力を結集してあたっている」
私はこういった発言は、政治家が保身でやっている言い逃れだと思っていましたが、最近どうやら違うと思い始めました。
彼らは大まじめに、全力で当たっていると考えているのです。
現場で対策に当たっている一人一人が全力を尽くしているなど、国民全員が知っていることです。しかし、国が全力で対策にあたるとは、現場が全力で働くだけではだめなのです。なのに現政府がやっているのは現場でなにが起きるが息を呑んで見つめること、叱咤すること、激励することです。これを恐ろしいと言わずに何と言えばいいのでしょう。

対策がうまくいかないことを前提とした準備が必要

東京電力が最前線で問題解決に当たっている理由は単純です。

ようするに、原発に一番近い技術者集団だからです。それ自身に問題はありません。そして技術者集団である以上、問題に対して一番いい方法を選んで、それを実行しようとします。しかし、それがうまくいかないときにどうするか。
政府がやるべきことは、一番いいと判断された案が外れたときに、事前の策をすぐに出せるように準備しておくことです。ひょっとすると起きるかもしれないことをあらかじめ調べて、いざ起きたときに即座に動くために必要な準備をしておくことです。原子力の専門家が思いつかない解決策がないか常に検討する組織を作っておくことです。
「XXがYYを提案したが東電が断った」
「XXがYYを提案したが政府が断った」
「XXがYYを提案したが…」
嘘か誠か、こんな話を何度も聞きます。情報のソースは何か、デマではないのか、そのたびに考えないといけないとはいえ、現政権の不手際を見続けていると、これらの噂はきっと本当だろうと考えたくなります。

可塑的な対応ができなかった以上、管内閣は退陣すべき

こういう問題が起きると、通常の手続きをすっとばし、横の組織の壁をぶち破って、強力な対策組織を作り上げなければなりません。その上で短期的に何千億円でもつぎ込んで、起きうる問題を多角的に判断し、常にバックアップ案の準備をするような、型破りの対策を打たなければならないのです。
そういう、超法規的な組織を作る手腕こそが首相に求められる「リーダーシップ」です。
事故発生から一ヶ月。ろくな対策を打っていない、打つことを想像すらできていない管内閣は退陣すべきです。彼らが居座れば、問題は拡大を続け、解決は先へ先へと伸びていくことでしょう。

*1:実際の運用の多くは関連会社だが