ラッダイト2.0

初音ミク*1は声優の職を奪うか、いや一概にそうとはいえないだろうという話。

つまり、すごく安くてそこそこ美味いジャンクフードが氾濫したら、手作りの味は消滅していく運命にあるかといえば、逆にそこに有難味が出てくるわけで、インスタント・コンビニな食べ物と、専門店の手作り料理と二極化したまま共存するのはありえるんじゃないか。データベースに仮想化しても、差異と剰余は消滅しない。

声優のほうはとりあえず横においておくとして、ここ100年以上一貫して機械は人間の仕事を奪い続けています。ただし、機械化で奪われた職以上に機械化が生み出す雇用が大きいと、そこそこみんな満足するか、満足した人に黙らされます。膨張主義ですね。経済が発展しているんだからいいやんって話。
ですが、ちょうどコンピュータの産業進出と同じころから、機械化が人間を追い出して職を奪ったままという構図が目立ってきます。鉄工業がエネルギー文明であり、膨張を目指していたのに対して、情報産業がエントロピー文明であり、合理化を目指しているという違いが、ちょうど膨張主義に一息ついて発展にかげりが見えてきた産業界とぴたりとあってしまった、という不幸がそこにあります。鉄の機械が入ってくれば職が増えたのに、シリコンの機械が入ってくると職が減る。私も製鉄所にある情報機械を納めたことがありますが、結構緊張しました*2
こういった流れを見る限り、コンピュータが声優の職を奪うってのはたぶんにあるだろうと思います。リンク先では「つまり何かと初音ミクと比較されてしまうという。」としてこれを認めつつ、しかし、高い技能を持つ声優は職を失わないだろうと。
つまり仕事は減るんですよね。これはもう、仕方がない。機械の性能が上がるにつれ、機械程度の仕事しかできない人たちは仕事を失ってきました。もうひとつ付け加えるならば、消費者のほうがどんどん低品質を受け入れているため、機械ではできない技量を持った人も次々機械に置き換えられています。そうすると、「初音ミク vs. 声優」でなくとも、われわれは機械に仕事を奪われるのだろうなと考えます。

以下どうでもいいこと

リンク先のリンク先に漫画家のアシスタントがこれからなくなるようなことが書かれています。ふと思い出したのが久米田康治のアシの前田君。久米田康治は早い時期からPCによる作品作りに取り組んでいますが、だったら前田君の仕事って何?と思ってしまいました。漫画家のアシは文字通り漫画家を手伝いながら、自分がやがて一人前の漫画家となって飛び立つための腕を磨いているわけですが、先生がPC使ってるとそのあたり、どうなんでしょうか。久米田康治の弟子といえば、誰もが思いつくのは畑健二郎です。逆に畑健二郎がどうやって独り立ちに必要な技量を久米田康治から受け取ったかのほうが、現代社会としては興味深いといえるかもしれません。
はじめから才能にあふれていました、って落ちだと、暗いなぁ。

*1:くどいけど、誰か「デイジー」歌わせて。id:suikan:20070913

*2:とはいえ、現場の鉄の男たちは外の会社のホワイトカラーには噛み付かない。噛み付かれるのは管理職。

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