ウラニウムは薄すぎる

中性子が235Uに吸収されると、核分裂が起きます。そして、1個より多い中性子が放出されます。元の中性子より多くなった中性子が他の235Uに吸収され、核分裂が起きます。そしてまた、さらに中性子が放出されます。こうして鼠算式に中性子が増えていくのが核分裂の連鎖反応です。
ところが、核分裂によって発生する中性子はきわめてエネルギーの高い中性子です。この高エネルギー中性子は、スピードが速すぎるため、235Uにとっては捕球が難しすぎます。捕球できない場合にはどうしましょう。その場合は、他の選手をカバーに入れればいいのです。その選手が取れないときには?さらにカバーの選手を入れましょう。
原子核をキャッチャーとすれば、金属の中には原子核がたくさんあるので、相当カバーの選手が豊富だと言えます。どのくらい豊富かというと、大体10万メートルごとに1人…。
カバーが薄すぎます。そのため、剛速球である高速中性子はどのキャッチャーにもめぐり合うことなく、やすやすと金属ウラニウムの塊から飛び出してしまいます。高速中性子がどこかでキャッチャーに捕球され、さらに多くの中性子を核反応で生み出し、さらにそれが他のキャッチャーに捕球される、という連鎖反応を起こすためには、純粋な235U数kg程度の塊がそれなりの量、必要です。
もしそのような塊を作ることができたら、自然放射線を引き金としてその場でその塊は核反応を起こし、高濃度のウラニウム蒸気になるでしょう。蒸気になる前に核反応が一気に進むように作られた機械が原子爆弾です。
しかし、天然ウラニウムの中には235Uは0.7%程度しか含まれていません。天然ウラニウムの大部分を占める238Uは核分裂を起こさないくせに、中性子を吸収することがあるため、連鎖反応の足を引っ張ります。そのため、純粋な天然ウラニウムはいくら集めても連鎖反応を継続させることはできません。
ましてや、原子炉で安定に利用するために、ウラニウムは化合物にされ、焼結され、ジルコニウム合金で包まれています。