サンマが美味しくなると夏も終わる

先日、我が家の食卓にこの夏初めてのサンマが上りました。サンマが美味しくなると夏も終わりですね。暑い日が続いていますが気がつけば日は短くなり、重苦しい暑さもだいぶ和らいできました。
随分前のことですが、ひどい夏ばてにやられたことがあります。毎日ぐったりと疲れ、夜寝ても疲れが取れず、終いには食欲がなくなる始末。私の場合、かなりひどい病気でも食欲は出るのですが、その夏ばかりは本当に食欲がなくなって、どうすれば良いのかさっぱり分からなくなりました。
ある日のこと、食卓にサンマが上りました。きっとその暑い夏も終わりの頃だったのでしょう。すっかり毎日のことになった、もそもそとした所作で「いただきます」を唱え、サンマに箸を伸ばしました。
背のあたりを、ひとくち。
「あ、これ美味しいね!」
思わず、そのとき口にしました。脂が乗り始めの頃です。美味しくないわけがありません。
「おいしい?」
という家内の声が弾んでいて、思わず顔を見合わせました。夏ばてが吹き飛ぶようなおいしさです。
サンマを堪能して、ふと考えました。毎日あまり美味しくなさそうに食事をする私を、家内はどんな風に見ていたのだろうと。どうすれば夏ばてが治るか、どうすれば喜んで食事をするか、そんなことを毎日考えながら献立を作っていたに違いありません。健康上の理由とは言え、私はその気持ちを全く理解しないまま、暗い顔で毎日食事をしていたのです。ひどい話です。
寒いときには体が温まる料理、暑いときにはさっぱりしてスタミナの付く料理。季節ごとに旬の味。食べる方に理解する気持ちさえ有れば、食卓はとても豊かな時間です。
今年のサンマも美味しくいただきました。

/* -----codeの行番号----- */