ムペンバ効果

暑いんだから、暑苦しい喧嘩はやめろよ、と思うのですが、冷たい話題。

水よりもお湯の方が早く氷になる――。NHKがこんな氷の早作り技を番組で紹介したところ、早大大槻義彦名誉教授がブログで「物理学で未解明」などと激しく批判。一方、NHKでは、「実際に実験で確認しており、番組に問題はない」と反論している。

「冷蔵庫に熱いものを入れると壊れる」
と、信じていたのですが、ためしに東芝の冷蔵庫の説明書を読んでみた所、熱いものを冷凍する仕掛けがあると書いていました。21世紀はすごいことになっていますね。実験する人は自分の冷蔵庫に入れていい温度の上限を確認しておきましょう。
この件、ちょっと引っかかることがあって、Googleセンセイにお伺いを立ててみました、案の定Wikipediaに説明があります。

注意深く読んでみると、この効果の(Wikipediaでの)説明は、「湯のほうが小さなエネルギーで冷却できる」ということではない、とわかります。湯のほうが早く凍る、ということです。熱力学の法則に反する主張がなされているわけではないようです*1
水もお湯も流体なので対流を起こします。流体の熱伝導にとって対流は決定的な効果を及ぼします。「初期状態が荒れているほうが、安定状態に収束する時間が早い」という例はほかにもある*2ため、この実験を一概に「トンデモ」と決め付けると足をすくわれそうです。
仮に自分で実験する場合、対流と純粋な熱伝導の冷却への寄与率をパラメータとして制御できるようにしておくと面白いかもしれません。つまり、

  1. 非常に対流が置きやすい装置(底の深い金属のマグカップ)を使い、初期温度と氷ができるまでの時間の関係を測る
  2. 対流の寄与が小さくなるような装置(例:上の装置にほぐしたスチール・ウールを入れる)を使い、初期温度と氷ができるまでの時間の関係を測る
  3. 常に攪拌しながら初期温度と氷ができるまでの時間の関係を測る

といった実験を行えば、ムペンバ効果の後ろに潜むものが対流かどうかをはっきりできるでしょう。
いずれにせよ、お湯のほうが早く氷になるといっても、お湯を作るのにエネルギーが必要で、かつ、それを冷やすのにさらにエネルギーが必要です。ムペンバ効果はライフ・ハックにはなるかもしれませんが節約にはならないのです*3NHKがよく流している「明日のエコでは遅すぎる」という言葉に一理があると思うのなら、ムペンバ効果は夏休みの自由研究として使う程度にしておきましょう。

*1:私はセン熱の仮説は捨てていいと思う

*2:Quick Sortにかかる時間など

*3:時間の節約とか言ってニヤニヤしている人は立ち去ってください!

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