手放しには賞賛できない一作

たま〜にですが「部分部分はどれも楽しかったけど、全体として見通すと面白くない」という本にぶつかります。最近読んだこれもそう。

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

「当代一のSF作家」と必ず巻末で紹介されるイーガン。量子力学を取り入れた話を得意とするだけでなく、科学一般に対して深い知識を持ち、それを強引に取り入れたアクロバティックなストーリーが持ち味のハードSF作家です。
本作ではサブストーリーごとに多次元宇宙、ナノマシン、至近距離でのガンマ線バースト核子による分子、ワームホールなど、科学分野での大技を取り入れています。
その各章はどれも心躍るんですが…なんですかあの結末は。コピー可能で不死を達成したばっかりに退屈になってます。ニーブンの幸福の遺伝子を思い出しましたよ。ついでながら、イーガンは熱力学の法則と計算量問題を派手に無視する傾向があり、今回もそれが気になって気持ちよく読めないことが何度もありました。
手放しには賞賛できない一作。頭が古いんですかねぇ。クラークの全盛期のようなカチッとした作品のほうが好きです*1

*1:ちなみにクラークの都市と星 (ハヤカワ文庫 SF 271)は好きになれませんでした

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