「天文台の電話番」

土曜日は家人と横浜に出て昼飯を食べた後、買い物という習慣になっています。買い物の間は私は本屋で暇をつぶすのですが、昨日も天体関係の書籍を眺めていました。そこで見つけた本が「天文台の電話番―国立天文台広報普及室」です。国立天文台広報普及室の日常をつづったエッセイなのですが、その著者が長沢工氏であるのを見て仰天してしまいました。
天体の位置計算 増補版」という本があります。天体がいつ、どこから見えるかを行列計算から始めて基礎から説明した本で、読み口のやわらかさにつられて進むうちに緯度経度、赤経赤緯から始まってあっというまに標準時、固有運動、歳差運動、章動、視差、光行差を含めた複雑な計算を行う高みまで連れて行ってくれる名著です。この手の計算をする人の間ではバイブルらしく、あちこちで参照されているのを見かけます。その名著の著者が長沢氏なのです。
「天体の位置計算」は1980年に初版が出版された後、暦計算システムの変更に関する記述を含めた増補版が1985年に出版されています。ところが、これは旧システムでの計算と新システムでの計算の間の変換を述べているだけで、読者の間からは「是非新システムで書き直した新版を」という声が今でもあがっています。
それが、なんと当の著者は天文台の広報室で小学生の女の子相手に電話で質問に答えているのです。興味の無い人にはなんでもないことですが、私にとっては水戸光圀公が汚いじじいの格好で田舎を歩いているのを見かけたような衝撃です。
もちろん買いました。ほのぼのとしたなかにちょっと皮肉のきいた読みやすい本です。

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