私は人造人間キカイダーの初回テレビ放送を小学生のときに見た口です。この番組は当時のヒーロードラマの例に漏れず、30分で一体ずつ悪の組織ダークが送り込む悪のロボットを倒す番組でした*1。ダークの首領であるプロフェッサー・ギルは自らの野望のためにキカイダーである主人公ジローを絡めとろうとします。ジローは不完全な良心回路に苦しみながらも、自分を造った光明寺博士の娘と息子を守り、最後には光明寺博士を救い出します。
で、小学生であった私は最終回にぽかんとしてしまいました。敵もやっつけたし博士も取り戻したのに、なんで好きだったミツコさんから離れて旅に出るんだ?そりゃーおかしくない?
この疑問は、後にケーブルテレビで「人造人間キカイダー THE ANIMATION」の放送が始まったときに、もう一度頭に浮かんできました。
「何で旅立ったんだ?」
そこで、放送中にキカイダーの文庫版を買って読んだのですが…。わかりません。というか、「げ、原作こんなラストだったのか」と呆然とするやら、ストーリーの迷走に戸惑うやらで却って混乱してしまいました*2。で、もやもやが晴れぬまま放送は進み、キカイダー THE ANIMATION最終回。
あっと驚くタメゴローっ!!なんと、アニメスタッフは原作を解釈した上で、私の疑問にきっちりと答えていました。
以下、アニメのネタバレなので改行:
9
8
7
6
5
4
3
2
1
このくらいでいいですかね。
ジローは、「お前もロボットなんだから、ダークのロボット軍団の仲間になれ」という誘いの声を蹴りに蹴りますが、一方で、ミツコはジローの気持ちを汲んでくれません。「あなたはロボット、私は人間なのよ」「僕もミツコさんも同じじゃないですか、どうして僕がロボットだと愛してくれないんですか?」。愛する女性に拒まれながら、その人を守るために同類を一体一体葬り去るジロー。並みの人間ならノイローゼになってしまうような葛藤をくぐり抜けた末、最終決戦を前にして、ついにミツコと心通じ合うことができます。
その夜、ジローの気持ちを受け入れたミツコは「人間はこうするの」と、ジローと愛し合います。翌日、ダークの基地を壊滅せしめたジローは、ミツコの元から旅立ちます。人間とロボットが違うことを知ってしまったから。
私はテレビの前であんぐりと口をあけてみていました。そうか、そういう解釈なら納得できる、と。例え原作者がそう描いていなくても、キカイダーという物語の中でジローとミツコの愛はBAD ENDしかありえません。ヒロインを聖処女ではなく、生きる喜び愛の喜びを知っている女性として描いたスタッフに完敗です。せつな過ぎる。
仲間のぬくもりを望みながらも、孤立することでしか自分でいられない、ハリネズミのようなエゴの描写が、石ノ森マンガの主人公の最大の特徴なんだろう。
3Toheiさんのブログより、「石ノ森の主人公は自分を仲間にしようとする組織から逃げている」という話。同類であるダークのロボット軍団を壊滅させ、愛する人からは旅だたざるをえなかったジロー。私はこのアニメの影響が強いんで、リバイバルは色恋の切なさを描くのがうまい人に描いて欲しいなぁ。北崎拓なんかどうかと思うのですが。「ふ・た・り」は本当に恋愛のせつなさが描けてるなと思って読んでました。と、思ったけど評価低いですね。残念。
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