イスラエルでのCOVID-19見聞記録と考えたこと

10月29日から11月5日まで、仕事でイスラエルに出張しました。COVID-19の感染拡大以降初の海外出張です。その際、見聞きしたこと、考えたことを書いておきます。

入国について

イスラエル入国の際の水際対策については在イスラエル日本大使館が公表しています。

事前のPCR検査義務は廃止されており、入国フォーム提出も不要となりました。一方で、COVID-19治療の保証付き保険の取得はこの時点でも求められています。成田空港ではチェックイン時に加入していない場合、チケットが発行されません。保険は空港チェックインカウンターの外で加入可能です。

10月29日の入国から30日の出社まで

チューリッヒからテルアビブ行きの便に搭乗しましたが、機内でほとんど誰もマスクをしていないため驚きました。
入国審査時、上記保険の証明書提出は求められませんでした。いつものイスラエルといった感じですが、エアラインに確認を代行させているのかもしれません。

空港内でもマスクをしている人はほとんどいません。

私が勤めている会社のイスラエルオフィスは、入国後出社前にPCR検査を受けることを求めています。オフィスはテルアビブ近郊のヘルツェリヤ市にあり、一番近いPCR検査場は市の中心部から10kmほど離れたイスラエル市内のものです。

検査はインターネットで予約と結果及び領収書受け取りができます。一番安いコースで14時間後に結果がわかりますが、追加料金と航空券の提示で急ぎの検査も可能です。

検査場はビルの一角のオフィスにあり、数台の機械が並んでいましたが当日は担当者が一人で応対しているだけでした。

街の様子

誰一人、と言っていいくらいマスクをしていません。記憶に残る範囲でマスクをしていたのは

  • PCR検査場の担当者
  • 検査場に来ていた老人二人

だけです。
バスに一度乗りましたが、公共交通機関でもマスクは求められません。オフィスもレストランも同様です。

オフィスでの健康管理に対して法規制はないそうですが、私の勤める会社では人事部が渡航者に対して上記PCR検査結果の提出を求めるほか、帰国者に対しては数日の自宅隔離が求められていました。私のような外国からの訪問者に隔離を求めないのはビジネス上の理由でしょうけれども、妙なダブルスタンダードではあります。

友人との会話

私は90年代にイスラエル企業で働いていたため、付き合いの長い友人がイスラエルに数人います。今回は別々の人と2度食事をとりました。

一人目との食事は彼の車とバスで移動しましたが、どの場面でもマスクは求められませんでした。彼のお父さんは高齢で死期が迫っており、弟さんと交代で病院に張り付いているそうですが、そういう状況でもマスクは求められませんでした。

二人目とはつっこんだCOVID-19の話をしました。彼の家族は春ごろに一斉にCOVID-19に感染・発症しています。幸いその際彼は感染せず家族を支えることができました。が、その彼も夏に感染・発症しています。彼の家族は全員ワクチンを接種済みでした。彼を含めて全員高熱が出たものの、数日で元気になり後遺症もないとのことです。
これは彼の個人的な意見ですが

イスラエルは高い接種率とひどい蔓延の結果、ほとんどの人が何らかの形でCOVID-19の抗体を持っている。いまやこの国ではCOVID-19はひどい風邪でしかない」

とのこと。もちろん、風邪で死ぬ人もいます。そこまで含めてのひどい風邪です。

チューリッヒでの乗り換え

行きのチューリッヒでの乗り換えは日暮れ時だったためにそれほど気になりませんでしたが、明るい時間中もほとんどの人がマスクをしていません。機内の放送によれば、スイスではマスク着用を求めないのだとか。

日本とイスラエルの比較

日本とイスラエルはずいぶんと街の雰囲気が違います。もちろん、それはマスクによるものです。人一倍でかい声で人一倍しゃべるイスラエル人が全くマスクをせずに生活する姿は、日本に生活する私からすると、たまに不安に感じます。

では、日本とイスラエルではCOVID-19による感染被害はどのくらい違うのでしょう。札幌医科大のサイトで人口100万人当たりの死者数の増減と累積を可視化してみました。比較用にフランスのデータも加えています。

現在日本は第7波が終わって第8波が始まっているとされますが、これを見ると友人が「風邪と同じになった」とするイスラエルと大して変わらない状況だとわかります。

いっぽう、累積死者数ではフランスやイスラエルの10分の1程度です。ここまで我が国は医療従事者の献身的な努力、国によるワクチン調達、国民のマスク着用率の高さから死者を抑え込んできました。当然ですがマスクを外す生活ということは、同時に国によるCOVID-19治療費全額負担は終わり、感染症としても2類指定から5類へ変更して発熱外来で診てもらうことになります。感染症指定を変更すると、病院を感染ハブとして一時的に感染者と死者が激増することも予想されます。いつかはやらなければならないことではあります。

人口100万人当たりの死者(21日間の増加分)札幌医科大による
人口100万人あたりの累積死者数 札幌医科大学による

マスクなしの生活に戻るのか否か

世の中ではそろそろ「マスクなしに戻してよいのではないか」という声が挙がり始めています。それは解放感への希求からくるものでしょう。ただ、ひとつだけくぎを刺しておかねばならいことがあります。COVID-19対策としてのマスクなしの生活は、暗黙に「社会としてCOVID-19による死者増加を受け入れる」ということです。直裁な言い方をすると
「『死ぬ定めの人は死んでも仕方ない』と言え」

ということです。

我々は安全なところに座って「他人の不幸に寄り添う自分」の姿に気持ちよく酔う生活に慣れています。ですから、医療費の削減や高齢者支援の制限に対して気持ちよく批判します。しかしながら、当然のこととして医療リソースを何か一つに無限に注ぎ続けることはできません。

最後まで自分では判断をせずに、誰かがマスク廃止やCOVID-19対策の終了を判断したときに人でなし扱いするような人間ではありたくありません。また最後までマスク着用とCOVID-19対策を叫ぶのであれば、その結果起きる経済的衰退を他人のせいにするような人間でもありたくないものです。

私自身の意見としては、今年のうちに「病気理由以外のワクチン非接種者に対して、COVID-19治療全額保証政策をやめる」措置をおこない、ワクチン接種率を上げたうえで、インフルエンザと花粉のシーズンが終わる来年5月頭をめどにマスク推奨の取り下げ、感染症5類から2類への変更を行うが適切だと考えます。それによる死者の増加は仕方がないことです。

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