福徳岡ノ場の噴火はプリニー式だったのか?

2021年8月13日に硫黄島沖の福徳岡ノ場で海底火山が噴火しました。


島が出来るなどして話題を呼びましたが、その後島は波に削られていきました。世間が忘れたころになって今度は先島や沖縄に大量の軽石が押し寄せて問題になっています。

さて、この8月13日の噴火が専門家の間で「プリニー式だった」ということになっているようです。例えば静岡大学防災総合センター小山真人博士によるコメント。

prtimes.jp


ということで、火山の専門家がプリニー式だと言っているわけですが、私の中ではまだ疑問がくすぶっています。そこで、自分の考えを整理するためにもここにその疑問点を書いておきます。

火山の噴煙の色

最近の大きな噴火はたいてい衛星写真に記録が残っています。身近なところでいえば2015年夏から本格的にデータを公開し始めたひまわり8号を使って、我々も過去の噴火を見ることが出来ます。

たとえば、2019年10月2日のカムチャッカ半島シベルチ山の噴火では噴煙がはっきり写っています。スクリーンショットには画面中央のシベルチ山から灰色の噴煙が空に流れている様子をはっきりと見ることが出来ます。

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シベルチ山の噴煙

また、2017年11月28日のインドネシアのアグン山の噴火は、うっすらとですが雲とは色の違う赤茶色の噴煙を見て取れます。

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アグン山の噴煙

ひまわり8号ではありませんが、NASAは2010年3月に噴火してヨーロッパの航空交通を大混乱に陥れたアイスランドのエイヤフィラトラ氷河についての情報を多く公開しています。その中にも灰色の煙が多く写っています(色を合成した映像もあるので注意)。

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エイヤフィラトラ氷河からの噴煙

三例だけですが、写真を見て分かるように火山の噴煙はいずれも灰色あるいは茶色であり、雲とははっきりと区別できます。

福徳岡ノ場の「噴煙」は白い

さて、改めて2021年8月13日の福徳岡ノ場の映像をひまわり8号のデータから見てみると、噴煙の色は白であることがわかります。

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福徳岡ノ場の「噴煙」

子細に見ると煙が薄くなった領域はいくらか灰色じみています。しかしながら、噴火が起きているまさにその場所は真っ白です。

私にはどうもこれが噴煙ではなくて雲に見えるのです。つまり、海底で大量の溶岩が噴出した結果付近の海域で激しい沸騰が生じ、猛烈な上昇気流となって積乱雲を作ったのではないでしょうか。そう考えると、シベルチ山やエイヤフィラトラ氷河の噴火に比べて、白くない噴出物が淡く見えることも納得がいきます。また、上のリンクの時間は14時から15時まで「雲」が一気に大きくなっています。これは発達した積乱雲の上でかなとこ雲が広がる様子にそっくりです。

成長する積乱雲は発達中の台風周辺に多く見ることが出来ます。たとえば、2021年9月10日の台風14号(チャンス―)の例ですが、明け方にコマ送りすると積乱雲の成長の様子がわかります。

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2021年台風14号「チャンスー」

結局どういうことなのだろう

上述した通り、専門家の間ではプリニー式ということで決着がついている(?)ようですが、素人目に見ると、これをプリニー式と呼ぶのだろうかと疑問がわいてきます。プリニー式だと噴出物が噴火した勢いでそのまま成層圏に達するようなイメージなのですが、福徳岡ノ場の今回の噴火は衛星画像や海上保安庁の動画で見る限りでは水蒸気が主体の積乱雲に見えます。

この辺、どうなのか興味があるところです。

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