最近、科学というものの一面をよく表していると思える投稿を立て続けに見ました。
一つはある情報があったときに、それが真実かどうか調べる方法を説明した投稿でした。もう一つは学名の記載に関する古い文献を手繰ることで、よく知られている生物に学名が無いことを発見したというつぶやきです。
いずれも科学というものが膨大な知見の積み上げというだけでなく、それらの知見を後の人が参照、検証可能になっているということをよく表しています。
最初はQ&AサイトであるQuoraに投稿された記事です。6月に投稿されたもので、3か月で141万回読まれています。
https://twitter.com/SukunaBikona7/status/1437781661845008391?s=20
http
s://twitter.com/SocStudMollDiv/status/1436078145120071680?s=20
この投稿者は、ある情報が真実かどうか調べるには情報がどこから来たかを調べればよい、と書いています。ある情報の主張者が情報がどこから来たか説明できない場合には、疑ってかかって見るべきですし、情報がその人の知人や家族から来たといったものであれば、やはり疑ってかかってみて構わないものです。
解答者は情報が学者だった場合、論文だった場合とさかのぼっていってその情報の確からしさを科学者ではない人が判断する方法を教えています。
この回答者のうまいところは、科学に不慣れな人が引っかかりがちな罠*1を丁寧に教えつつ、専門的な論文へのアクセスをを科学に不慣れな人でもできる範囲で薦めていることです*2。
学会の閉鎖性などと言った問題もありますが、科学は証拠を積み上げるだけではなく論文を保存しているので、その気があれば誰でも努力して検証することが出来るようになっています。
もう一つ、こちらは知っている人も多いと思いますがサザエの学名が決まっていなかったという話です。我々が食しているサザエには実は学名がないことを発見し、新たに学名を付けた方のつぶやきが非常に面白かったです。
サザエの話、いきます。4年前、「日本のサザエは新種」と報道されたことをご記憶の方もおられると思います。しかし、その話の元になった論文が、当会が発行に参画しているMRへ掲載されたことはあまり知られていないので、まずその宣伝を。https://t.co/g55DxjARhi
— 軟体動物多様性学会【公式】 (@SocStudMollDiv) 2021年9月9日
今日は、活字では未公表の(大学の.. pic.twitter.com/93ixXo4Mwg
サザエ後篇。さて、せっかく原記載まで見たので、この機会に私はサザエの分類の歴史を回顧してみようと思い立ちました。画像は私の論文が公刊された時点(2017年5月)までの、サザエとその姉妹種ナンカイサザエの分類上の扱いです。リュウテン科リュウテン属サザエ亜属に..https://t.co/g55DxjARhi pic.twitter.com/XcyR7IgZps
— 軟体動物多様性学会【公式】 (@SocStudMollDiv) 2021年9月10日
この方のつぶやきを読むと、やはり学名の記載やその紹介といった文献を丁寧にたどっていくことで、学名がつけられた経緯、その対応となる生物の特徴といった事柄を追跡できるのだとわかります。
興味深い点は、インターネット時代になってこれらの文献が電子化されたことなって可能になった、と語っていらっしゃることです。膨大な図書の中に埋もれた気の遠くなるような数の本をたどらなくとも、コンピュータとネットワークの助けでそれらの情報を高い視点から検証できるようになった、というのは素晴らしい事です。
同時に、こういったことが埋もれて知らずに放置されていたということは、生物という未知に対して科学者の数は圧倒的に少ないのだろうなと思った次第です。
立て続けに目の前に科学の知見を「手繰っていく」話が現れて、科学と言う営みの奥深さを垣間見た思いでした。
同時に同時に、ttps://twitter.com/SukunaBikona7/status/1437781661845008391?s=20