ツイッターでほうめいさんが面白いことをつぶやいていました。
LEDの電卓、VFDよりも数が少ないけどなんでだろうか。コスト的な問題でVFDの方が安くできたのか。それとも視認性かな?
— ほうめい マイコンで遊んでばっかりで (@houmei) 2021年2月8日
LED電卓は風情がないなぁ。蛍光表示管の方がいいよなぁ、と漠然と思っていましたが、言われてみればLED電卓はあまり見ません。
個人的に関心があるのがHP電卓と言うことで「70年代はLED電卓」のイメージが強いのですが、思い返せば父が買ったSHARPの電卓も蛍光表示管でした。 そしてヤフオクを覗いてみると、70年代はLCDを除けば圧倒的に蛍光表示管です。
ということでざっと調べてみました。
まず、1964年に先陣を切ってトランジスタ式電子「卓上」計算機CS-10を出したのは早川電機(今のシャープ)でした。1964年で53万5000円です。
この後、血で血を洗う低価格化競争と小型化競争が繰り広げられますが、LED表示器は出てきません。
世界で初めてLED表示器を使った電卓はBUSICOMのLE-120Aで、実はこれが世界で初めてのポケット電卓でもありました。1971年で8万9800円でした。
この辺からぽつぽつとLEDが使われ始めるわけですが、実は早くも1973年にはシャープが液晶電卓EL-805を発売しています。
1972年のカシオミニが1万2800円という途方もない値段で発売されたことに加えて、1チップLSI化により町工場でも電卓市場に参入できるようになりました。そのため、市場は低価格機種と高付加価値機種に2分されます。
これは想像でしかないのですが、1969年にモンサントによって実用化されたばかりの7セグメントLEDは、輸入して使うにはあまりにも高価だったのではないでしょうか。大量に使用すれば安くなるのは事実ですが、値段だけでいえば60年代半ばに日本で開発されて卓上計算機で実績のあった蛍光表示管のほうが安かったのではないかと思われます。一方、液晶に比べるとLEDは分厚く消費電流も大きいため高付加価値商品では使えません。
結局、登場して値段がこなれる前に液晶に市場を奪われたといったところだと思います。デスクトップ市場にはまだチャンスがあったはずですが、蛍光表示管との価格競争に負けたのでしょう。
一方、アメリカではなにしろLEDを国産していますから調達に不安はありませんし日本よりはるかに豊かなのでお金も出せます。さらに車社会のアメリカでは薄型電卓にそれほど付加価値を認めないため、70年代後期までのんびりとLEDを使っていたのではないかと思われます。蛍光表示管が日本の発明品と言うこともあって、アメリカではLED電卓が好まれたのかもしれません。しかし、日本からOEMを買う場合には蛍光表示管か液晶だったろうと思われます。
憶測ばかりですが、蛍光表示管の方がLEDより多い理由はこんなところじゃないかと思います。