イタリア映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』を観てきました。
ほんのわずかな映画館でだけ上映されているのですが、日本の貧相な科学技術政策に翻弄される研究職の間で話題になっているようです。ツイッターのタイムラインでも何度か見かけたので気になっていました。
本作は日本未公開の『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』の続編です。
前作で逮捕されるもののリーダーであるピエトロの自首と引き換えに開放されていた研究者達は、犯罪歴の消去を条件に、拡大するスマートドラッグの取り締まりに協力するよう警察から話を持ちかけられます。持ち前の専門知識を駆使して次々とスマートドラッグ組織を摘発する彼らですが、たった一つ謎のドラッグSOPOXだけが頑として成分の解明を拒むのでした。最後の最後に残ったこのドラッグの謎にたどり着いた彼らは…。
話としては比較的陽気などたばた劇です。背景に横たわる「真に知的価値を持つ人々が生活すらままならない状況に追い込まれている」という問題はわが国にとってまったく笑えない設定ですが、イタリアにとっても生々しい事実のようで、前作はまさにその点が話題になってヒットしたとのことです*1。
警察との非合法な取引に手を染めて危ない橋を渡っている間は元気な面々も、いざミッション完了となると、また誰からもその能力を認められることのない惨めな生活にもどるしかない。そういうしんみりさせるシーンなどは、比較的ありきたりなコメディといった作りです。
しかしながら、やはり真骨頂はあちこちで飛び出す専門用語とその怪しい使い道でしょう。早口でまくし立てて、呼吸をするように自然に相手を煙にまこうとするピエトロを中心に怪しい面々の活躍に笑いっぱなしでした。
お気に入りのせりふは
「あれは本物じゃない。帝政時代に作られた偽物だ」
です。それで納得できるかどうかは専門領域によりますよね。
さて気になる1作目ですが、こちらはまもなく始まるイタリア映画フェアで公開されるとのこと。
こっちも見に行くかどうか検討中です。
*1:パンフレットによる