アニメ「世紀末オカルト学院」まもなく最終回

漫画か小説だったと思いますが、最近読んだこんな一言で血を吐きそうになりました。
「高校生にもなってアニメなんか見てるの?」
高校生になって30年以上たちましたが、まだ見ています orz
さて、そんなまるで駄目なおっさんの私が今期存分に楽しませてもらったのが「世紀末オカルト学院」でした。
物語は1999年、主人公の神代マヤが父親の葬式に参加するところから始まります。父親は家族を顧みずにオカルトの研究に没頭し、挙げ句の果てにオカルト教育を行う「バルトシュタイン学院」を作り、その経営を行っていました。マヤは亡き父の後継者として校長として迎えられますが、冒頭の挨拶で痛烈なオカルト批判を行います。彼女は元々オカルト好きの少女でしたが、オカルト研究に没頭して家族と没交渉になった父親と重ね、オカルトを毛嫌いするようになっていたのでした。そんな彼女の前に、空から裸の男が降りてきます*1。彼は2012年*2の日本からやってきた未来人内田文明であると名乗り、1999年7月*3に起きる世界の破滅を阻止するために協力してくれとマヤに頼みます。はじめは懐疑的だったマヤも次々起こる怪奇現象を文明とともにくぐり、彼の心の傷を目にするにいたってともに活動することを決意します。
いつも眉間にしわを寄せ、「オカルトなんて大嫌い!」というマヤの周囲には未来から来たくせに全然頼りにならず、しかもストーリーが進むにつれてメッキがどんどんはがれていく文明、幼なじみの亜美、ほとんど頭のねじが外れかかっているこずえ、いつもダウジングロットを手放さないJK、JKとつるんでいる機械工のスマイルなど、ひと癖もふた癖もある連中ばかりが集まります。なにしろハチャメチャな連中ですので、毎回お約束のようにお笑いシーンが挿入されます。その一方で、ストーリーは幾分不穏です。
オカルト全否定のマヤですが、彼女は元々オカルトマニアであり、やたらとオカルト知識が豊富です。その彼女の前に悪霊だの、モスマンだの、臨死体験だの、UFOだの、チュパカブラだの、幽霊だのと次々に怪奇現象が起きます。オカルト嫌いのマヤがこうした事件を目にしながら少しずつオカルトを受け入れていくという、全体を通したストーリーは、一方で、彼女が嫌悪しきっていた父親をゆっくりと受け入れていくもう一つのストーリーと歩みをともにしています。
素っ頓狂な設定でありながら、この作品では主人公がうさんくさいと思っていた相棒を受け入れ、本当は父親が好きな自己像と向き合う課程が実に丁寧に描かれています。そしてほとんど全体の3/4が終わったとき、ちょっといい話だと思っていたエピソードの最後で実は学院こそが、マヤが父親にねだったプレゼントであったという事実が明かされます。これでマヤが父親や学院を嫌う理由がなくなってしまいました。
迎えた先週はいきなりの大展開。ちょっと怪しいんじゃないの?とは思っていたものの基本かわいい車オタであったキャラが黒魔術師としての姿を現し、うさんくさい独身女と思われていたキャラが白魔術師*4に化け、いきなり魔術バトルの始まりです。
超展開?
いえいえ。この作品はそもそも「オカルト」なのです。世界にはみんなが知らない別の面がある、見ようとして見えない、見たくなくても見えてしまう別の面があるのがオカルトです。オカルト嫌いの少女は本当はオカルト好きでした。いないはずのUMAはいました。未来からのエージェントは本当はへたれでした。家族を顧みなかった父親は、本当は娘のわがままを聞いてくれていました。大事なものが見えないのはめがねがないからでした*5。この作品では次々に価値観がひっくり返っていきます。サブタイトルには二重の意味があり、公式サイトには二つの世界が描かれているこの作品において、おばさんが白魔術師になってバトルするくらいアリでしょうよ。


この作品は、3ヶ月かけていくつかのエピソードを紹介しながら、視聴者に対して登場人物の心や世界観の変容を植え付けてきました。それはきりきりと弓を引き絞るような見事な脚本といえます。矢が放たれた今、どんな大団円を迎えるのか楽しみです。

*1:ターミネーターのパロディなのだが、やたら空から女の子が振ってくる風潮に対するセルフパロディとも受け取れる

*2:最近流行の新終末。年末頃にマヤ暦がリセットされるらしい

*3:例のノストラダムスによる地球滅亡云々といわれた月

*4:どうでもいいけど、リリキュアになれなかった絶望少女はこの作品で魔法少女になれた

*5:

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