限定解除をしたころ

はてなのキャンペーンに乗っかりました。今週のお題「雪の日の思い出」

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単車の限定解除をしたのは、たしか30歳になる年でした。もう15年以上前です。
その冬から近所……といっても電車で二三回乗り換えが必要な駅……の教習所にいって限定解除のコースを受講していました。当時は教習所で限定解除をすることはできませんでしたから、あくまで訓練を受けているだけです。何時間受講し、実習をこなしても免許をもらえる保証もなにもありません。教習所に隣接する運転免許試験所での試験を通過するのが唯一の合格手段でした。
寒い中、毎土曜の朝一の実車訓練を受けていました。単車はホンダのVF750Kだったでしょうか。わざとだとしか思えないのですが、整備が悪く、ブレーキを握るとガックンガックンとピッチが揺れる上に、さらに握りこむと悲鳴をあげたくなるほどステアリングが振動するような単車でした。あとで免許試験場で乗った試験車両のすばらしさに、「もっと受験したい」などと倒錯的なことを考えたものです。
さて、2月のある土曜日のこと。例によって暗いうちから早起きして教習に向かうべく、革ジャンを羽織って外に出てたまげました。雪がちらついています。表を見ると道路にはうっすらと雪が積もっています。一瞬、どうするか悩みました。いつもなら単車でショートカットしていくのですが、電車に切り替えると教習所につくころは予約を入れた1コマめが終わっています。
部屋の前の道路は通行料が少ないので、幹線道路まで出れば雪は積もっていないでしょう。幸い単車は軽量なSRX4です。昼近くになれば全部融けるはず。覚悟を決めるとカッパを上から着込んで表に出ました。
国道16号は、まだ大丈夫でしたのでまずは一安心。
しかし、見込みは見事に外れました。雪はどんどん強くなります。どんどん、どんどん強くなります。ようやく教習所についたころには、もう確実に「今日1日雪」といった雰囲気でした。
慎重に運転してきたため、時間はギリギリです。慌てて2階の準備室に駆け上がると……教官が輪になってストーブに当たってました。こちらを見て「今日は休みだよ。練習するのなら止めないけど、俺たちここで見てるから」と笑ってます。コースは完全に雪に埋まっていました。
仕方ないので挨拶だけして帰ろうとしたところ…
「酔漢さん、ひょっとして、単車?」
私のカッパが雪だらけであることにようやく気づいたようです。
「はい」
「……そう、気をつけてね……」
言われずとも、帰りの道には細心の注意が必要でした。ひっきりなしに降る雪のせいで国道16号も路面はシャーベット状態。加えてもともと発熱の少ないSRX4は、雪の融解熱のせいかエンジンが温まらず、交差点で停止する度にストンとエンジンが止まってしまう始末。何回交差点でキックしたやら。
結局、なんの成果もないまま、ほうほうの体で部屋に帰り着きました。その日、関東南部は20年ぶりの大雪だったとか。苦労のかいあって、4月には限定解除に合格しました。

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