今年の読書の総括をと考えていたのですが、ワインが回ってもうだめです。印象に残った列挙するのが精一杯になりそうです。
月と6ペンス
今年ぶっちぎりの一位。古典の凄みをまざまざと見せつけてくれた1冊です。主人公が落ちていくに連れて、その魂が純化されていくのを暗喩するかのように情景描写がカラフルになっていきます。久々に電車の中で鳥肌が立ちました。
夜間飛行
「俺、フランス文学って何冊読んだっけ」と言うくらいフランス文学には暗いのです。今年読んだこれは冒険小説としてのおもしろさに加えて、広大な空間の中で動いていく人間の営みを想像力豊につづっているさまが実に味わい深かったです。あの描写力はひょっとすると、作者のパイロットとしての経験に裏打ちされているのかもしれません。
とらドラ!
「ライトノベルって、言うほどレベル低くないじゃん」と、思いっきり誤解する原因になった本です。登場人物の心情を深く掘り下げながら、それを暗喩としてしか描写しないという独特の構成によって、小説らしい奥の深さを作りあげています。10巻の終わり方にやや不満があるものの、それで本書のおもしろさに疵がつくというわけでもありません。「ど」がつくほどハマりました。
夜は短し歩けよ乙女
これもおもしろかったですねぇ。一種奇書だとおもうのですが、コメディってこういう作り方も出きるのかと感心しました。「さよなら絶望先生」で「この本をおもしろいって言わないと頭が悪いみたいで嫌だ」というネタがありました。言い得て妙。
新美南吉童話集
短篇「狐」一本で強烈な印象を残してくれました。ちょっと忘れられない作品です。