次世代スーパーコンピュータに関して、追記

次世代スーパーコンピュータに関する関心は各方面から高いせいか、昨日のエントリは珍しくコメントが並びました。この件に関しては、コメントは別にしていろいろな反応があり得るだろうなと思っています。
側面が多すぎて私には多面的に観ることは無理ですが、一つ二つ考えたことを書いておきます。

科学技術研究予算は聖域なのか

私個人の感情論としては聖域なのですが、一方で納税者として全方面に湯水のように使うことには賛同できません。我が国の現状を考えるに、陳腐化した言い回しですが選択と集中は必要でしょう。ただし、集中が単一分野かというとそんな馬鹿な結論にはならないはずです。

  • 広い分野の基礎研究
  • 現在日本が競争力を持っている、あるいは持ちうる分野への重点的な後押し
  • 将来日本が競争力を持つべき分野への重点的な後押し

といった点を考えながら予算は吟味されるべきでしょう。現在の日本の経済を牽引しているのが工業競争力である以上、それを引っ張る科学技術分野の研究活動は、農業支援や雇用促進のための公共事業投資と同じ目で見てはなりません。
いや、見てもいいと思うのですが、その時は遅くとも20年後、重要工業分野で世界から完全に退場するというビジョンに基づいた国策を用意するべきです。

予算を取る側の説明義務

なんでもそうですが予算とはどのように使うのか説明する必要があります。説明には何種類か考えられると思いますが、

  • 何に幾ら使うかという明細
  • どのような見返りを期待できるかという目論見

あたりは必要でしょう*1。両者の比がいわゆるコスト・パフォーマンスです。
次世代スーパーコンピュータ計画は、少なくとも2番目の点において、国民への説明義務をまぁまぁクリアしているように思えます。計画の概要は理化学研究所の同計画に関するWEBページに説明されています。次世代スーパーコンピュータによって何が出来るようになるのか、というのは概要ページに手短に書いてあります。一般の人ならばだいたいそんな物かとおぼろげな姿がつかめるはずです。コンピューティングと科学の関係に関心がある人ならば、ターゲットアプリケーションページにずらりと並ぶ文書にはそそられることでしょう。私が興味深い十持ったのはタンパク質の全電子解析で、病気治療、新薬合成などの強力な武器になることが期待されます。次世代スーパーコンピュータだとほとんどのタンパク質に高度な解析を適用出来るとのことです。
また、子供向けの解説ページもあります。
私は科学者、研究者の国民に対する説明義務に対して厳しい見方をする口ですが、少なくともこのプロジェクトのWEBサイトは「説明義務を果たしていない」「説明する気が無い」と指弾される筋合いのないレベルにあります。

仕分けはディベート大会か

これはくどくど書く必要はないですね。説明が下手だから予算を削るというのなら、それは万死に値しますよ。

世界一であることは重要であると思う

研究者ではない門外漢ですが、最先端研究で世界一であることは重要だと考えています。

  • 優秀な研究者は最良の環境に集まる
  • 先取りされることで、経済的な後れを取る分野がある
  • 主導権を取られると困る分野がある

いちいち説明するのもめんどくさいですが、本の通販、検索広告といった分野でどの国にお金が流れて行っているのか考えて見れば、少しはわかりやすいかもしれません。Googleは巨大な資金にモノを言わせて、電力網と電気自動車を接続する巨大システムを構築しようとしています。特定分野で負けると、次世代の広い分野で覇権を握られて自由がきかなくなる一例です。

で、繰り返しになるけど

松井氏と金田氏はなぜ反対なんでしょう。詳しい理由を本人たちの言葉で聞きたいです。

*1:明細を全国民に透明に示す必要はないと思う

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