16-25 とらドラ!(全10巻)

3月第2週は難しい本を読まないと決めていました。モームについて書いたけど、読んだのは前の週です。ということで、出張先のホテルでYoutubeにはまりまくった罪滅ぼしに、原作に着手。本日全巻読了。

とらドラ!1 (電撃文庫)

とらドラ!1 (電撃文庫)

いやいや、面白かったです。
知らない間に隣に住んでいた美少女、逢坂大河と同じクラスになり、ひょんなことから互いの片想いの応援をするはめになる主人公、高須竜児。見た目と裏腹に触れる者皆傷つける歩く狂気、全校から「手乗りタイガー」と恐れられる逢坂大河のドジで純な一面を見てしまった竜児は、互いの複雑な家庭環境からくる親近感もあって、彼女をほっとけない気持ちになっていきます。
目つきの悪さだけで級友からどん引きされる竜児と、切れやすさで行く先々モーゼが海を渡るがごとく道を譲られる大河。この二人の進級早々の数日間をコミカルに描いたのがたぶん読みきりで書かれた第1巻です。
好評だったのでしょう、シリーズ化され昨年秋から半年のスケジュールでテレビアニメも放映中。つい先頃発売された第10巻で大団円となりました。
第2巻以降は季節のイベントを盛り込みながらじりじりと二人のそれぞれの片想いが進行していきますが、6巻から急にコミカルな印象が薄れていき、大まじめな恋愛小説化していきます。所々お笑いが入っていますが、そちらはあくまでおまけです。
第9、10巻は、よほど作者も筆が乗っていたのでしょうか、夢と現実の乖離、大人と子ども、知ってほしい気持ち、知ってほしくない気持ち、怒りと受容といったテーマが竜児に津波のように押し寄せて、息もつかせぬ展開です。私はまとめ読みしましたからいいですが、出版と同時に追いかけていた人は10巻が出るまで地獄のおあずけに苦しんだことでしょう。
ところでアニメで逢坂大河の声をあてている釘宮理恵さんが実に上手で、繊細なヒロインの細かい心の動きをよく表現できています。彼女の出演作品は「金色のガッシュ」「銀魂」くらいしか見ていないのですが、これほど芸達者な方だとは知りませんでした。
脇見運転の読者の多くは、私と同じく高校卒業ン十年という方が多いと思うのですが、みなさん

「…笑わないで。お願い。…バイトが終わったら、話を聞いて。もしも私が逃げそうになったら、…ちゃんと、捕まえて。お願い」 (9巻 222p)

などという照れくさい台詞に身もだえし、その後の展開にあんぐりしてください。
地の文と会話文の接続に癖があり、少々読みにくいこともありますが、お奨め。

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