素人衆翻訳

銭衝さんのところより

翻訳のような高度な作業を完全なボランティアでまかなうのは無理があると思います。

ですよね〜。
そろそろ時効かな。以前勤めていた会社の一つで、「400ページくらいある文書の翻訳を大学生の研究室に任せたいと思うが、どうすればきちんとした翻訳になるか考えてくれ」と、命じられたことがあります。話を聞くと、とある研究室にタニマチ的援助をしたいらしいのですが、通常のパスだと、寄付することは出来ません。そこで仕事の委託という形にしたいとのこと。その心意気やよし。
聞けばプロに依頼した場合の数倍の額です。私に話がきたのは、すでに翻訳のチェックをした経験があったからです。半導体分野の文書の場合、特殊な、しかも新しい用語を文章全体で一貫した訳語に保つ必要があります。この時点で分業が難しい。しかも、委託する方は会社の名前を貼り付けて顧客に配るのですから、生半可な文書に仕上げられては困ります。
その会社では
「以前からお願いしていて、技術にも通じている会社」
による翻訳のチェックが私に回ってきたことがありました。が、あまりに品質が悪くて匙を投げ、次回複数の翻訳会社に2,3ページをテストで翻訳してもらうコンペを開かせたことがあります。プロですら、それです。学生がよってたかって翻訳した技術文書など、客に出せるわけがないじゃないですか。
で、その社長によるところのアイデアにはっきりノーと言ったため、社長室に呼ばれて事情聴取(w。「箸にも棒にもかからない物が出てくるのは目に見えており、その文書を実用化するために我々が努力するのは2重に無駄です。しかし、ご命令とあれば努力しましょう」と、言ったので追い返されました。いやぁ、あのあと私を処罰しなかった社長は大人物でした。
で、研究室には予定どおり依頼が行われ、出てきた翻訳文書の品質の低さは想像を上回りました。
「はいはい、私がチェックしときます」
と、受け取ったものの、最初からペン入れで真っ赤。英語の能力の低さに加えて、中学生並みの日本語が頻発するうえ、めまぐるしく文の癖が変わります。これにも結局耐えられず、やがて、本棚の肥やしに。
「それじゃ社長の顔が立たない」
と代わりに引き受けた上司も途中でほうりだしていました。
そんなこんなで、何が言いたいかというと、いい大人が翻訳をないがしろにするのはやめましょうねということです。文書は組織の顔になるのです。プロにお金を払ったって失敗することがあるんですから。まして未だプロでない人に、お金を払わないなんて。

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