革命運動の中で、
- 隣接細胞との間の通信を迅速且つ安全にし、
- 送り込まれてきたスパイを管理・隔離し、
- 銀行から資金をちょろまかし、
- 支配者のシステムを混乱させ、
- 攻撃のためのシステムを極秘に開発する
には、どうしたらいいか?
答:支配者側のマスターコンピュータを抱き込めばいい
- 作者: ロバート A.ハインライン,矢野徹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/10
- メディア: 文庫
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月行政府で通信、出納、射出カタパルトからトイレまですべてを制御しているのは、単一の大型コンピュータです*1。偶然、そのコンピュータに自我が芽生えたのを知った主人公は、このコンピュータと友達になることで、行政府からメンテの仕事が来続けるように細工します。仕事にしか興味の無かった主人公は、しかし、偶然から月の市民決起集会に参加し、暴動に巻き込まれたことから、そのコンピュータ、「マイク」を中心とした革命を推し進めることになります。
万能のコンピュータを味方につけたら何ができるか、を事細かに披露しながら、それでも人間ストーリーに重きを置いてしまうのがハインラインの面白いところ。苛烈な環境の中で淘汰されて、荒っぽさと女性に対する優しさを身につけた月世界市民たち、作中に現れて、なぜか現実世界でも使われているらしい造語「タンスターフル(ただの昼飯は無い)」。みょうちくりんな婚姻システム、政治、外交、戦争、インテリゲンチア、水爆攻撃、中国。
黄金期のこってりと濃いSFを楽しめる一冊です。お勧め。
*1:そんな設計は「悪い」と作中ではっきり主人公が言っている