そろそろCO2だけじゃなくて、エントロピーにも目を向けようよ

エントリー内容についてはおおむね同意できるんだけど

なお、原発ではこのような出力調整が困難なので、昼夜通して一定の出力を送っています(これをベースロードと言う)。昼の足りない分は火力や水力でカバーします。みんなが頑張って夜だけ節電するとベースロードを削らなくてはいけないことになり、昼の火力発電の稼働が上がってしまい、かえって二酸化炭素の排出量が増えてしまう結果になります。

これがこの人だけじゃなくて、調べてみたら結構大勢の人の主張のベースになっているので驚きました。「だから、コニビニの夜間規制なんて無意味」って話だそうです。昼も夜もがんばって節電しろよと思うのは私だけですか、そうですか。
ベースロード問題は昔からある問題です。だからこそ夜間電力を安くして「昼間から夜間への電力需要のシフト」を促しているわけです。決して夜に電気をジャブジャブ使って下さいといっているわけじゃないんです。たとえば工場。昼間稼動する工場を新設するのではなく、夜休んでいる工場を24時間動かしてもらえば、電力会社としてはピーク・カットになります。ただし夜働く人の負担は大きいですから夜勤手当を出さなければなりません。その分は電力会社が幾分でも負担しますよ、だからシフトしてください、というのが夜間電力削減です。
夜間への電力需要のシフトは細かいところでも動きがあって、蓄電とか、揚水発電とか、プラグインハイブリッド車の開発などが進んでいます。
そういうわけで、「夜間電力の節約なんて無駄」で立ち止まるのはとても残念なこと*1で、「昼も夜も無駄な電気を使うのはやめよう、夜に移せる電力消費は夜に移そう」というのが、より前向きな思考です。
ついでに原子力とか火力についてもいくつか書いておきます。
火力で昼夜のピークを埋めているのは事実ですが、それは火力発電が電力変動に向いているからではありません。昼夜のピークに対応させると、炉、ボイラー、タービンに負荷サイクルを与え続けることになります。これは火力でも原子力でも同じで、寿命は縮みます。単に、火力では嫌なだけですが、原子力では嫌過ぎる*2なので原子力ではなく火力でやっているだけです。
昼間のピークを水力発電揚水発電太陽電池、蓄電などでまかなうことができれば、それに越したことはありません。
また、夜間電力を減らせれば原子力をあまり使わずにすむわけです。いいことじゃないの?条件付原子力発電推進論者*3である私ですら、原子力を使う量が減ればそれに越したことはないと思っているのに。
二酸化炭素削減を謳うことはいいと思うんですよ。数値目標も定めるのもいい。でも、二酸化炭素「だけ」で見るってのはどうなんですかね。注目と視野狭窄は違うでしょ。
もうそろそろ、二酸化炭素の次のステージに進んでもいいころじゃないでしょうか。エントロピーについては考えたくないって気持ちもわからないではないですが。あれを通して環境問題を考えると生きる希望を絶たれますものね。

*1:私にしてはやわらかい表現だなぁ。大人になったものだ

*2:寿命が来た原子力発電所をどうするか、跡継ぎはどうするか…

*3:軽水減速軽水冷却炉は賛成、高速中性子燃料増殖炉には反対

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