没稿集

飛行機の中で一気読みしました。

クラークとキューブリックによる「2001年宇宙の旅」共同脚本から始まって、小説としての2001年宇宙の旅が慣性していくまでのエピソードを交えた没稿集です。脚本完成のあとに小説を書いたわけではなく、小説が映画脚本との間で相互に影響を与えながら書かれていく様子が良くわかります。
全体の3/4かそれ以上が没になった原稿であるため、「失われた」の名前の通り、「歴史のif的作品」が並んでいるようにも思えます。しかし、そこはさすが巨匠。短編小説として読めば、読みどころの多いテキスト群です。
読後に感じるのは、近未来と超テクノロジーの間に横たわるギャップです。近未来を書くときのクラークは、文学などの引用の多い、知的な読者向けの文章を書くのに対し、超テクノロジーの場面となると妙に描写的な薄い文章になってしまうようです。もともと、自分たちの技術や観念をはるかに超えたものを描こうとするのが一大挑戦なのだとあらためて感じました。
あと、バローズ等ビートニク作家と親交があったというのが、意外でした。クラークとバローズ。どんな話をしたのか想像もつきません。
お勧めかと言われるとちょっと首をひねります。クラーク好きならどうぞ。

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