NHK 『「ポアンカレ予想」100年の格闘』

録画していた番組をようやく見ました。
100年間、あまたの数学者の挑戦を跳ね除けてきた「ポアンカレ予想」今世紀になってついにロシア人数学者によって予想が正しいことの証明がなされました。この偉大なる業績にフィールズ賞の授与が決定します。しかし、授賞式の場で明らかにされたのは、証明した数学者グリゴリ・ペレリマンは受賞を辞退し、この場にも現れないこと。それどころか、彼は音信不通状態にあり、消息が分かりません。
なぜ。
番組ではこのあと、ポアンカレ予想とは何かを丁寧に、かんでふくむように説明し、それに続いてポアンカレ予想に挑戦し続けた数学者達の苦闘を紹介します。
ポアンカレ予想とは、3次元空間(宇宙)の形に関する予想です。有限な大きさの2次元空間の形を考えるとき、真っ先に思いつくのは球の表面です。しかし、ボールのような球体のほかに、穴の開いたドーナツのような形も考えることができます。ある2次元が球体の表面のようなボール状なのか、それともドーナツの表面なのか。ポアンカレはロープ一本でそれを判別できると説明しました。では3次元は?
3次元でも空間が球(のように曲がっている)かどうかを、ロープ一本のかかり具合で判定できるだろう。と、いうのがポアンカレ予想です。番組ではこの説明をグラフィックスを使って非常に丁寧に説明しています。
一見簡単なこの予想。しかし、数学者がこれに挑む準備が整うまで、実に50年が費やされます。
数学の新時代を象徴する問題に果敢に攻め込む数学者達。しかし、その挑戦は数え切れない挫折を呼びます。天才ともてはやされ、ポアンカレ予想に最も近いといわれつつ、失敗を繰り返す数学者。解けた!と喜んでは、やっぱりだめだったと落胆する毎日。ある数学者は気難しくなり、感情のコントロールを失っていきます。ある数学者はすっぱりと数学から足を洗います。
数学、という浮世離れした感のある世界で、数学者が感じる孤独とプレッシャーを実に見事に描ききった番組です。きのこ狩りを押し出しすぎているのが余計ですが、その他の点はすばらしいできでした。再放送あるのかな?お勧めします。

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