夜、歩く

私はナイトライフを楽しむほうではありません。また、なぜか出張中は夜お腹が空かない上に、そもそも出張中は仕事がたまるものなので自然と暗くなってもホテルの部屋にこもって一人で仕事をしています。が、どうやらフラストレーションがたまって来たのでケンブリッジの夜の街を歩いてみることにしました。大人向けのバーがあれば入ってみるのもいいでしょう。
19:30で既に街は暗くなっています。人通りは少ないですが、女性二人組みでも楽しそうに歩いていますので治安はいいのでしょう。さすが世界に冠たる学都。と、おもったら広場に停車している車から大音響で音楽が響いています。どこに行っても同じですか。
大音響には感心しないものの、その音質には感心してしまいました。日本だとこの手の連中のオーディオ装置というと、カットオフ周波数100Hz、6dB/OctのLPFでも入っていそうな音ですが、彼が鳴らしていたのはかなり遠くでもきちんと高音が聞こえます。レゲエ特有の貧乏臭いボーカルもちゃんと聞こえました。
レゲエの横を通りすぎると、Wagon of Lifeとかいう妙に意味深な名前のケバブ屋。で、レゲエの前にいたのがNight Life Standとかいう意味深な名前のケバブ屋。そういうものなんでしょうか。
人通りのある道やら、人通りのない道やらを歩きます。総じて暗いので、雨にぬれた石畳に白熱電球っぽいオレンジの光が反射していい雰囲気です。
大学の前はとても暗いです。その暗い、通りにある古い石造りの建物から女性が出てきて、歩いていく様が実に絵になります。こちらの女学生さんは落ち着いた感じのコートやハーフコートをお金をかけずにうまく着こなしています。すこしおしゃれな人だと細身のブーツが実に似合っています。そういうのが似合う街でもあるのでしょう。女性ならこういうファッションをうまく言い表す言葉を知っているのでしょうか。
治安はよさそうなのですが、妙にはしゃいでいる原色系の細身の男二人組みなんかもいて、ちょっと怖かったり。男専用の怖さですが。
結局学校に近いパブは全部学生らしき人々で埋まっていたのであきらめて広場でケバブを食べました。ナイトライフの方。先ほど「ケン、ケン、ケン」と聞こえた気がしたので「シャローム」と声をかけてみましたが、乗って来ません。なんとなくユダヤガテン系*1なのに。ふと見ると、奥のカウンターの上に英語の教科書らしき本。
"I have done. I did."と大きく書かれたチャプター。私よりずっと英語が堪能なのに苦労しているようです。
ひょっとしたらユダヤじゃないかもしれない、と思わせる落ち着いた接客で渡しされたケバブをみて、失敗だったと悟りました。このケバブはアキバのドネル・ケバブと同じ系列です。イスラエルのそれじゃない。しもたー。
羊臭いです。香辛料をもっとたっぷりほしい。羊臭い料理は一番苦手です。とはいえ、これを食べ残すのは男の美学*2に反するので、羊臭い羊の肉を広場の端に腰掛けてがつがつと食らうことに。
すると、明らかに私より腰周りの豊かな、お嬢さん以上おばさん未満が登場。眼鏡着用。でも眼鏡っ子にはなれないタイプ。その人が、私が背を預けている建物の二階に向かってヒト声
ケーン
キジじゃありませんよ。でもだれも出ません。つれないケンさん。
困ったなという感じで笑いながらしばし考えたその眼鏡さん。ポケットをまさぐると、取り出したコインらしきものを二階めがけて投げます。すげー、テレビでは見たことがありましたが、生身の人間が窓に物を投げてヒトを呼ぶのを見たのは初めてです。
でもだれも顔を出しません。ケンさんつれなさすぎ。不器用ですから。
さらにコインを投げる眼鏡さん。さすが太っ腹。見た目どおり。しかしケンさん顔を出さず。出せばいいのにね。ここで顔を出して、「おー、ジュリエット、ジュリエット、どうして君はジュリエットなのかい?キャサリンなら教会から連れ出して、二人でバスで逃げるのに」くらい言ってみるのが男だと思うのですが。
ともかく、羊臭いケバブを食べながら、恋に身もだえする旧乙女の姿を見ると言う、思いがけない収穫のあった夜でした。
で、部屋に戻ってばたんキュー。それが昨晩の話

*1:腕太い。ひげ濃い。胸板厚い。ユダヤ・インテリ系だともじゃもじゃ頭で眼鏡。痩身

*2:15年くらいに「古いわよ」と一蹴されたことがある

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