味わいのある案内書

この本がまだ書店にあることを日本の天文ファンは幸運に思うべきではないでしょうか。
全316ページに、日本から小型望遠鏡、双眼鏡で見える天体が季節の星座別にまとめられています。と、そう書くとなんでもない本のようですが、この本の魅力は1ページ1ページから筆者の暖かさが漂ってくることです。
なにしろ星座ごとに掲載されている星図は筆者の自筆!ありがちな装飾過剰の星座絵はなく、替わりにページの片隅に、まるでいたずらで描いたかのような味わいのある、そのくせ驚くほど的確な絵がぽつんとあるだけです。
一方で、見ごたえのある天体については、個別のファインディングチャートを元に丁寧に探し方を説明し、ときには天文学の歴史や神話の話を交えながら見え具合が落ち着いた口調で説明されます。そしてよく見れば星座はとおり名だけではなく学名まできちんと掲載されている丁寧さ。初心者から上級者まで使える本になっているのです。
著者はすでに鬼籍に入られてしまいましたが、この本がこの先もずっと販売されることを願うばかりです。
著者が訳を行った月面ウォッチング―エリア別ガイドマップもお勧め。

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