id:Tpongさんからトラックバックで小惑星の「レッカー移動」についてコメントを求められました。で、この本です。
- 作者: 日本スペースガード協会
- 出版社/メーカー: ニュートンプレス
- 発売日: 1998/06
- メディア: 単行本
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著者である日本スペースガード協会は、名前から連想されるような浮ついた団体ではありません。プロの天文学者とアマチュア天体観測家による地球近接小惑星の発見を目的とした団体です。この団体は小惑星が地球に衝突することを想定して、可能な限りそのような危険を早期に発見すること目指しています。
そのような団体ですから「小惑星が地球に衝突することはない」などという楽観論が展開されるはずもありません。本書は近年地球への衝突が懸念された小惑星の話から始まり、有史以前にあったと思われる小惑星衝突の痕跡、世界の巨大クレーター、小惑星が衝突する確率、小惑星が衝突した場合に想定される被害、衝突が予測されたとしてその回避方法の案が紹介されます。
さて、肝心のTpongさんの「将来小惑星にものをぶつけて軌道をそらすことが出来るか」という疑問にはきちんと検討がなされています。
無理
計算値が紹介されています。
- 小惑星の直径 1Km
- 軌道への干渉は衝突の100年前
- 衝突速度 20Km/秒
として、小惑星を十分そらすのに必要な質量は275t!。ちなみにディープインパクトの場合、
- 彗星の長径 10Km
- 衝突速度 10Km/秒
- 衝突体質量 370Kg
今回のテンプル第一彗星は小惑星ではない…とは言え、必要な質量と今回の実験の格差は現実感を失うほどです。どうやら現実解としては熱核兵器の近接爆発しかないようです。
最後に、この本から小天体の衝突による被害を直径別に予想してみると:
- 10m
- 大気中で爆発し、小さなかけらが降ってくる。
- 100m
- 関東平野が壊滅する。
- 1Km
- 全面核戦争による核の冬をはるかに超える気象異常。文明の危機。
- 10Km
- 種の大量絶滅。
10Km級の小惑星衝突痕は地球上に幾つもあります。