福知山線事故

JR西日本労務管理に関して問題が取りざたされているが、しかし、この機会を捉えて組合が「遵法スト」を打つとかそういう動きが見られない。いやもちろんJR西日本そのものに対しての不信感がある中で、いくら組合とはいえ「スト」は打ちにくいような気がするけども、しかし何らかの積極的な反応が組合からあっても良さそうなものだ。

確かにそのとおり。かつて全国の鉄道を停止させて「スト権スト」という世にもめずらしいパラドックスストライキ*1を強行した国労の存在感は見る影もありません。

バッシング

いろいろな意味で民営化の弊害と見る向きもあるかもしれませんが、私は事故の本当の原因は大都市の過密状態だと思っていますので一方的にJR西日本を批判する意見には同意できません。ダイヤの遅れを駅員に噛み付いている輩はよく見ますが、それを「まぁまぁ、ダイヤより安全ですよ」と制している人を見たことがありますか?企業だって淘汰圧力がかかればそれに応じて変異します。

伝言報道

中日新聞は16,7の小娘にでも記事を書かせているのですか?

国交省やJR三社によると、オーバーランの二〇〇四年度の件数は(1)JR西日本(五十九件)(2)JR東海(十七件)(3)JR東日本(十六件)−の順。一人当たりの運転士が年間に起こすオーバーラン回数に換算すると、(1)西日本(〇・〇一四回)(2)東海(〇・〇〇九回)(3)東日本(〇・〇〇二回)だった。

この数字が当てにならないことなんか、ハムスターにだってわかりそうなものですが。与えられた数字に対するこの純情さは何でしょうか。無批判を通り越して宗教的ですらあります。大体一人当たりオーバーラン回数なんて何の意味もない数字じゃないですか。

運転士一人当たりの比較では、西日本は東日本の七倍、東海の一・五倍の頻度でオーバーランを起こした計算だ。ただ、どの程度でオーバーランだったとするかは各社が独自に判断して集計しているという。

今回のオーバーラン過小報告を一度でも目にしていれば、独自集計だというだけで数字が当てにならないことはわかりますし、「JR西が突出」なんて恥ずかしくてかけないでしょうに。

JR西日本管内では尼崎脱線事故以降も、九件のオーバーランが続発。他社の半年分に当たる件数が、事故後の五日間に集中していた。

まさか本当に事故後の五日間に集中して多発していると思ってるのですか?

私的オーバーラン頻度

私の感覚だと、オーバーランによる停車位置修正は3年か4年に一度経験しています。ざっくりと片道20駅、1日40駅停車していると考えましょう。1ヶ月に20日通勤すると12ヶ月で9600駅に停車しています。3,4年に一度ということは、だいたい私の通勤路線*2では3万から4万停車に1回の割合でオーバーランが起きています。
さてJR西日本。同社のhttp://www.westjr.co.jp/company/data/data.html*3によると、東は北陸線から西は博多南線まで、1215駅、うち新幹線専用駅が6駅です。ここで非常に荒っぽい予想ですが平均して1駅に1日30回停車するとすると、JR西日本全体で1日3万6千停車です。5日で9回のオーバーランなら2万停車に1回です。
京浜地区が経験的に3~4万停車に1回。JR西日本が2万停車に1回。実はJR西日本オーバーラン率は目くじらを立てる程突出していません。

統計の嘘

とまぁ、具体的に数字を挙げて計算して見せたのは、統計の嘘をお見せするためです。嘘をついたのはほかならぬ私。すぐ上で行った比較には以下のような欠陥があります。

  • 京浜地区の私の経験はラッシュ時に集中しているが、JR西日本の数字は非ラッシュ時も含んでいる。
  • 京浜地区の私の経験は過密地区だけを基にしているが、JR西日本の数字は過疎地も含んでいる。

今回の事故は騒がれているように「過密ダイヤによる運転手への負担」が大きな要素だといわれているのですから、比較をするならばそれらに基づいた分類を行わなければ意味がありません。
結論から言えば、オーバーラン率は会社ごと、運転手ごとに比較しても意味はありません。今回のような問題がある場合には「路線ごとのオーバーラン率」を比較して過密ダイヤとオーバーランに相関性があるかどうかを検証することからはじめなければなりません。もちろん、重要なのは停車回数あたりのオーバーラン率です。回数なら過密路線のほうが多いに決まってます。猫にだってわかる話です。
このように、統計的な値は無批判に受け取るところっとだまされてしまいます。中日新聞が引用している数字がいかに意味がないかわかっていただけたかと思います。
その前にオーバーランが目くじらを立てるべき問題かどうかは論議をまたなければなりませんが。

信頼性

私の頭の中での信頼性ランキングはこんな感じです。
JR西日本 >> NHK >>>>>>>>> 越えられない壁 >>>>>>>>> 新聞各社、スポーツ紙 >> 民放
これっぽっちも信頼できない人達がより信頼できる人をバッシングする奇妙な光景を見ています。いつものことですが。

過密ダイヤではない

運行ダイヤに関する詳しい解説です。事故直後に

  • 9時代ならラッシュのピークではないのではないか
  • 京浜東北はもっときついダイヤで動いている

と感じた「過密ダイヤ」に関する疑問が氷解しました。一本一本の間隔が短いことよりダイヤが乱れたときにそれを回復する余裕が小さいことが問題であるという指摘です。
ほかにもカーブがなぜ工事によってきついものに変更されたかといった説明もあります。
いろいろ根が深いなと考えさせられました。
おとなり日記2005-05-02 - 天漢日乗経由)

*1:世にも珍しいなどと書いていますが、検索したら韓国では生々しい現在進行形でスト権ストが論じられているようです。

*2:京浜地区

*3:Firefoxでは見ることが出来ません。むかつく

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