ダーウィンの使者

ネタバレ注意。いや、ネタバレしか書きません。
エルンスト・マイアーの訃報を聞いて、彼の著作を読み直しているところです。で、唐突に思い出したのが2年ほど前に読んだこの本。

ダーウィンの使者〈上〉 (ヴィレッジブックス)

ダーウィンの使者〈上〉 (ヴィレッジブックス)

ダーウィンの使者〈下〉 (ヴィレッジブックス)

ダーウィンの使者〈下〉 (ヴィレッジブックス)

人類の進化には実は遺伝子自身に進化がプログラムされている、というダーウィン主義から程遠いSFです。その最大のねたが、「断続平衡進化どころか、1世代で進化が終了する」というアクロバットです。1世代で亜種ではなく、別種に進化するため、親が属していた種*1とは交配不能です。たぶん。それどころか発声器官すら激変して会話ができなくなるので、それを補うため、妊娠中に両親*2の体が極端に変質するよう遺伝子が働きかけます。
トーリーの大半は、この両親の変質の原因がわからないために謎の疾病として恐れられるという点に費やされています。
で、マイアーの著作を読みながら唐突に思いついたのですが、両親は子供と会話できるよう変質するのではなく、寄生した子供が宿主の体質を捻じ曲げてしまうという考え方も出来ます*3。つまり、「疾病だと思ったら単なる妊娠だった」のではなく、「疾病の原因は寄生動物だった」と考えてもこの小説はかなり辻妻があうのです。
そして、これまで疾病にかかった患者を闇に葬っていた社会は間違っていたのではなく、正しいことをしていたとも(^^;

*1:この場合は人類

*2:片親じゃない

*3:宿主のホルモンバランスをいじる寄生虫は多い

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