アンタレス食

「アンタレスぐい」ではありません。「アンタレスしょく」。さそり座の一等星、アンタレスが月の裏側に隠れます。
「日食」は太陽がお月さんの裏側に隠れることですね。星がお月さんの裏側に隠れることを、一般には星食と呼びます。あと、星が月のふちを掠める事を接触と呼んでいます。
3月30日の25:30*1頃にアンタレスの食があります。

先島など一部を除いて日本全国で観測することができます。特に那覇では接触ですね。うらやましい。
観測には小型の双眼鏡が必要ですが、深夜型の方は挑戦してみてください。食の始まりより食の終わりのほうが面白いようです。難しいんですけど。
深夜、双眼鏡を持って歩く場合は、くれぐれも犯罪者と間違われぬよう注意してください。あはは。

アンタレス

アンタレス(Antares)の語源は「アーレス(Ares)に敵対するもの」です。接頭語のAntはアンチ(Anti-)に似ていますからなんとなくわかりますね。ところでアーレスはギリシャの戦の神です。そこで血のように赤い星である火星もアーレスと呼ばれました。アンタレスは火星と同じくらい赤くて明るいので、つまりは「火星に張り合う星」という意味です。
ローマが発達したとき、ギリシャ文化を積極的に取り込みました。ギリシャ人は火星を戦の神アーレスと呼んでいましたので、ローマでも彼らの戦の神マルスの名で呼ぶことにしました*2。現在火星がMarsと呼ばれるのはここから来ています。
火星は2年に1度、アンタレスに近づいてはその赤さと明るさを競っています。

蛇足

火星の衛星、フォボス(恐怖)とダイモス(壊走)は軍神アーレスの眷属神です。あるいはマルスの戦車を引く4頭のうち2頭とも言われます。フォボスダイモスも暗い星なので、1877年の大接近の時にアメリカ海軍天文台のホールが大望遠鏡でようやく発見しました。ようやく、というとまるで知っていたような書き方ですが、当時「火星に二つの月があるはず」というのは常識でした。だって当時知られていた衛星の数を考えると、

  • 金星 : 0
  • 地球 : 1
  • 火星 : ?
  • 木星 : 4

ですから。火星は2に決まっているでしょ!火星に衛星が二つあるという話はガリバー旅行記にも出てきます。
1877年の火星大接近は明治10年。時の政府を揺るがした西南戦争の年です。人々はどんどん明るくなる火星を西郷星と呼んだそうです。

もっと蛇足

ちなみに俊足の半神半人アキレスの戦車は、二頭の不死の馬が引きました。名をバリオス、クサントス*3といいます。アキレスより速く戦場を駆けることが出来たのはこの二頭だけだったそうです。カワサキ乗りは覚えておきましょう。

*1:30日の25:30とは31日の01:30のことです

*2:和魂洋才。違うか。

*3:ザンサスはクサントスの英語読み

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