ものが壊れるわけ

二日連続で紹介するとまるで一日で読み上げたようですが、そうではありません。昨日の本の紹介をサボってました。しかしこっちをさらっと読み終えられたのは事実。

ものが壊れるわけ

ものが壊れるわけ

「物が壊れるわけ」を解説した本だと思って読むと足をすくわれます。確かに著者の専門である分野に基づいて、物が壊れるということを多くの具体例に基づいて説明してくれます。また、強いことと硬いことは違うということや、高温や低温がなぜ物質を弱くするかについての説明もあります。
が、この本はエッセイです。量子化学に従事する研究者が自らがたどってきた道を振り返りながら、「物が壊れる」ということと世間とのかかわりをひぐらし机に向かいて徒然なるがままにつづったのがこの本です。ですから、通俗向け科学解説本に共通する「読者に理解してもらいたい」という思いが希薄です。
その結果、結晶だの原子の並びだのといった話のオンパレードであるにもかかわらず一冊通してイラスト一枚ないというそっけないしあがりになっています。

加工硬化が生じるのは、原子の平面が実際には一度に互いに対してずれるのではなく、少しずつずれていくからだ。この動きを思い浮かべるひとつの方法は、床の上でカーペットを引っ張るのにたとえてみることである。

それはひとつの方法ですけれど、イラストよりは劣る方法ですよね。深く理解した人が陥る典型的な説明障壁をここに見ることができます。自分の頭の中では抽象化され、きれいにイメージができているのですが、説明する相手にそれが言葉で簡単に伝わると思う勘違い。あるいは、相手に理解させることに対する関心の欠如。
ちょっと辛口になりましたが、内容は平易な上にいろいろ面白い話題があります。星三つ半かな。
ところで河出書房って裸のランチ (河出文庫)みたいな本ばかりだと思ってました。

/* -----codeの行番号----- */