立場

丹梅さんが、「中国人はどうしてこんなことをするのか」といわれることのつらさを書いてらっしゃいます。

10年くらい前の仕事を唐突に思い出しました。イスラエル系企業に勤めていた私は、客先のトラブルに際してイスラエル人技術者を客の所に連れて行き、通訳をしていました。イスラエルと日本の電子技術者の仕事の仕方はまったく違います。イスラエルの技術者は困難なトラブルに出会うと自分を最高のコンディションに高め、集中力を研ぎ澄まして最高の作業環境の中で問題を合理的に追い詰めていきます。対して日本企業*1は、「終わるまで監禁」が原則です。個人としては別でも、組織としては相手の合理的説明には耳を傾けません。イスラエル側のうんざりするほどの合理論はたびたび日本人の感情を紙やすりでこするような不愉快な言動につながりますし、日本人の根性論、誠意論のレベルの低さはハイテク製品開発から程遠いものです。
両者のいうことをどちらも理解できて、かつ、不愉快に感じていた私ですが、それでも家族から離れたところで必死に我慢しているイスラエル人技術者を見ると、文句は言えませんでした。ところが、ささいなことがおきました。
あまりにも事態が非合理に行き過ぎた結果、先方の主任技術者がとうとう切れたのです。普段温和な笑みを浮かべ、相手の言葉をよく聞いて物腰も丁寧な上にかみそりのように頭が切れる彼でした。が、夜中に話している間にとうとう押さえきれなくなったのか
「君の国はどうかしているぞ」
と私に噛み付いてきたのでした。それに対する私の答えがこれです。
「そんなこたぁお前に言われなくても日本人の俺が一番わかってんだよ」
大人気ない話です。3分後、あらゆる意味で私より人格者である彼が私に頭を下げてその話は収まりました。
自分の国の悪い点など、よその国の人に言われるまでもありません。それでも指摘されれば腹の底から悔しさとも怒りとも嘆きとも説明のしようのないどろどろした何か沸いてきます。たぶん、それは愛国心としか言いようのないものなのでしょう。

*1:日本の技術者じゃないところがポイント

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