ニュートリノに質量の確率「99.99%」

id:v4641sgrさん経由のニュースです。v4641sgrさんもおっしゃっていますが、「もうちょっと一般誌でスペースとってもらいたいなあ」とと思います。そもそも、このニュース読んでも何が何だかちっともわかりません*1
ニュートリノの質量に科学者が取り組んでいるのは、これが宇宙論の見直しを要求するからです。現代の宇宙論量子力学体系を取り込んで成立している精密な理論です。しかし、量子力学は物質の性質のすべてを説明するわけではありません。素人理解で思い切って言えば、量子力学は力学なので「相互作用」や「運動」として表せないものは説明できません。そうしたものは、量子力学に外部から与えらるものなのです。与えられた値が変れば、量子力学が出す答えも異なり、その結果宇宙論も変ります。
ニュートリノ質量は量子力学が説明できない基本量の一つです。これまでニュートリノには質量がないと仮定されていました。質量が無い物質は光の速さで移動することができます。また、どれほどの量があっても天体の動きを変えるなどということはありません。これまで質量が無いと考えられてきた物質に質量があることが確かになってきたため、宇宙論は見直しが必要になります。
1987年に大マゼラン星雲で超新星爆発が起きたとき、核子崩壊実験カミオカンデ(Kamioka Nuclear Decay Experiment)の神岡地下施設でニュートリノの異常が検出されています。これは最終的にマゼラン星雲の超新星からのニュートリノだと結論付けされました*2カミオカンデは陽子の寿命を計測するために作られ、1983年から稼動していました。1985年からは太陽ニュートリノの観測を開始していました。
余談ですがカミオカンデによる初期の活動の結果、陽子の寿命は当時提唱されていた量子力学大統一理論のモデルの一つが予言する寿命より長いことが明らかになりました。その結果モデルが排除されています。「この理論が正しければ、陽子寿命は1030年のはず」と予言されていたのですが、カミオカンデによって1030より長いと結論が出たのです。この一連の実験とニュートリノ観測実験で小柴博士がノーベル賞を受賞しています。
超新星天文台で観測されると同時に地下の観測施設がニュートリノを検出したということが、ニュートリノが光の速さか、あるいはそれにきわめて近い速度で移動しているという証拠と考えられます。しかし、光の速度とニュートリノの速度には極めて小さな差があり、単に検出できないのかもしれません。
頭痛がするので続きは明日

*1:利根川進博士のノーベル賞受賞の時に同様な疑問を持って書いたという立花 隆の「精神と物質」isbn:4167330032あるが非常におもしろい本。

*2:16万光年くらい離れている。光が16万年かかって地球に到達したとき、ニュートリノもほぼ同時に到着した。ほぼ同時というのは、現在の人類のテクノロジーでは到着に時間差があってもその理由を速度差といえないということ。超新星爆発時にニュートリノの放出と閃光が同時に起きるのかという問題もある。16万年の旅だと、速度差が1/5千万であっても1日の差が付く

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