Congraturation

外資半導体企業というのは日本企業と比べるとかなり変っています。あちこち違っているのですが一番違うもののひとつが「マネージャー」でしょう。日本企業の方に名刺を出すと「あ、マネージャーでいらっしゃいましたか。これは失礼しました」といきなり姿勢を正されることがあります。しかしながらかなりの外資半導体企業ではマネージャーというのは「担当者」です。担当者にもピンキリでして製品開発担当なんて地位ですと世界中のマーケッターや開発者を取りまとめる権力を持つことになりますが、当然ながら相当数のマネージャーがお客様苦情担当だったりします。24歳でマネージャーなんてのも別に珍しくありません。優れているんじゃなくて彼しかいないのです。特に小さい会社は一人であれこれやらなければなりませんから、マネージャーの肩書きを与えて格好だけつけることが多くあります。30歳の時に社員5人なんて会社に転職しましたが、そのときマネージャーの肩書きをもらってもうれしくもなんともありませんでした。ていのいい使いっ走りです。
幸い今の会社に来てからはマネージャーの肩書きが取れていたのですが、昨年からいやいやマネージャーをやらされています。さすがにそれなりの大きさの会社なので形ばかりの人事権も与えられています。が、実情はというと、「人を増やすにはどういう手続きをすればいいのですか?」としかるべき人にメールを送っても惚れ惚れするほど見事に無視されたりします。ぎゃふん。
さて、アメリカで久々にあった人と世間話をしているときに、流れで「最近どんな仕事しているの?」という話題になりました。で、「マネージャーになった」というと、すごく明るい声で「Congraturation! That is big step up!」などといわれてしまいました。
社内で見た電子産業系の雑誌に「アメリカの技術者は技術者を一生の職と考えず、経営に参画したがる」ということが書いていました。これはよく知られていることで、経営参画意識の高さが効率的な開発やスタートアップ企業の活性化に役立っていると一時期は言われたものです*1
まったく先の一言はその風潮をよく反映しています。こちらに来て「マーケティングやらされてるんだ」といっても同情してくれるのは数人です。すばらしいアップグレード・パスと受け取られているようで毎度毎度考え込んでしまいます。管理職というのは管理能力のある人にしかるべき訓練を与えてはじめて成立する仕事です。外資にいると、現場でそれなりに能力のある人が管理職をさせられて最後につぶれるという例をたくさん見ます。当たり前です。他になり手が無いからやらせているだけなのですから。
日本企業の人事が「外資には人材が集まっている」と恐れているような記事を日経エレクトロニクスで読んだことがあります。が、中間管理職がガタガタの企業は決して少なくないですから心配には及ばないでしょう。
祝福してくれた方には申し訳ありませんが、私にとっては不幸以外の何物でもありません。

*1:無論弊害もある

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