プロは雇えない。予算がないから。

id:QianChongさんの所から通訳者の話が広がっているようなので私も素人通訳者の話を。id:QianChong:20040330。
前の会社は小さなベンチャーでした。某国資本の会社で開発部隊に殆どの人材が集中しています。ビジネスが成功したのでどんどん大きくなりましたが、それでも某国に150人くらい、日本に6,7人というのが私のいた頃の状況でした。そういう小さな会社ですが、時流の波に乗ったこともあり日本の顧客数社と仕事をしていました。
さて、某国の開発部隊から人が来たり、あるいは日本の顧客が某国に訪れたりする場合、必ず通訳が必要になります。技術のとりまとめをやっている方というのは、大抵30代半ばの脂の乗ったリーダークラスです。通信回路やコンピューター、果ては筐体設計部隊まで見ている人ですから頭は切れます。こういう人は英語が英語が得意だろうが苦手だろうが自分の仕事について英語で話すことくらいは出来ます。
が、英語が苦手な管理職の方々や、まだリーダーまではちょっと、といった方も出席すると通訳が必要になってきます。誰がやる、となるとそれは日本オフィスの人間がやるしかありません。それも技術の打ち合わせになると、「技術者なんだからお前がやれ」とお鉢が回ってきたものです*1
こういう時は、はじめっから「プロの通訳者じゃないんだから」と投げてかかっています。何しろ自分の理解できないことは通訳できないので*2、度胸一発仕事の内容を聞きながら自分の言葉に噛み砕いて双方向通訳をやりました。
さて素人通訳者がやっていることですので、いつも低レベルの問題に悩まされれます。

1.双方が通訳者を交渉相手と見る

「だからね、酔漢さん違うんですよ」などと相手が言い出したらもうだめです。「私は通訳ですから相手の目を見て話してください」と、いえるのは相手が課長までです。日本の大手電機メーカーの本部長にそんな事言えません。うんざりします。

2.通訳者を手下だと見る

「ちゃんと説得してくださいよ」
あんたが説得しろよ。通訳してやるから。

3.小間使い

「酔漢さん日本法人なんだから記録ぐらいとってくださいよ」
じゃ、お客さん通訳してください。双方向通訳ってしゃべっているだけの簡単な仕事に見えるんでしょうか。私の能力ではとてもほかのことに頭を使う余裕はありません。

4.長話

これは偉い人に多いのですが、考えながら話をしているのか一つの文が非常に長い人がいます。いつまで経っても句点がありません。「そうかといって」「という人もいますが」「なんてことがあるかと思うと」「ですから」「そういうわけなんですが」と、よくもここまでと思うほど長い文をひねり出してくれます。その間待たされている外人がいらいらして説明を求めたりすると最悪です。外人のお守りをしながら訳を考えられるわけなどあるはずもありません。
まぁ、大抵その手の長い話は「難しい問題なんですわ」で終わったりします。長い話ほど意味がないというのは本当ですね。なんにせよ私にかかればどんな長い話も30秒に縮みます(あははは)。「勝手に略さないで全部訳してください」と言われたときには閉口しました。
英和通訳のときは散々長くしゃべった相手(同じ会社)に「そんな長話訳せないよ」とへらりと言うことが数多ありました。嫌われてたなぁ。

某国人は話の相槌が「No」なので、いろいろと苦労も多かったです。仕事を離れるといい連中なんですが。低レベルの仕事だったので苦労も低レベルでした。今思い出すと本当に雑な事やってました。

*1:実際には某国渡航の事前注意、通訳、翻訳、イスラエル観光、飯の案内、来日某国人向け日本観光のアレンジ、と全部回ってきます

*2:担当外の通訳もやったわけです。

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