探査機ハヤブサと小惑星ITOKAWA

日本の人工衛星はやぶさは日本としては四番目の地球圏外天体探査機です*1
はやぶさは近地球軌道(NEO)にある小惑星に接近し、接地を繰り返して表土を取得、地球に持ち帰ることを目的としています。地球の外から物質を持ち帰ることをSample Returnと呼んでいます。はやぶさの活動が成功すれば世界初の小惑星からの試料持ち帰り(サンプル・リターン)となります。

月は地球の近傍にあるため、起源が地球と近いのではないかという説があります。また、多くの小惑星の衝突や火山活動によって、誕生当時から姿が代わっています。小惑星は太陽系誕生時の状態を比較的よく残しているのではないかと期待され、試料持ち帰りには大きな意味があります。また、持ち帰った試料は他国の研究者にも分配されます。
はやぶさは試料を捕獲した後、小惑星から離脱して地球に向かいます。そして、地球とランデブーしたときに試料の入ったポッドを大気圏に投下します。はやぶさ本体は減速せず、そのまま地球を離れて近地球軌道を周回し続けます。
なお、はやぶさは試料持ち帰り以外にも多くの技術の確立を目的としています。
太陽電池パネルを左右に伸ばし、下方に試料を捕るためのプローブを伸ばした姿が猛禽類を思わせること、はるかかなたの獲物を捕らえて持ち帰る役目などから「はやぶさ」という名前はぴったりです。
はやぶさが目指す小惑星1998SF36は1998年にMITのリンカーン研究所による近地球小惑星研究プロジェクトによって発見されました。

小惑星命名権は発見者にあります。そこで日本からリンカーン研究所に頼んで小惑星をITOKAWAと名づけるよう提案してもらい、これが承認されました。

ITOKAWAという名前は日本のロケット開発の父、糸川博士を称えての名前です。博士は戦後まもないころにペンシルロケットから初めてカッパーロケットまで日本を導いた指導者でした*2
糸川博士は若い頃中島の隼戦闘機開発にかかわった事があります。日本製ロケットから打ち上げられた探査機はやぶさ小惑星ITOKAWAのもとに試料を取りにいき、それを日本が回収するとはあまりにも出来すぎですが、なんとなくほほえましくもあります。
はやぶさは地上からの実時間制御が効かない場所で、非常に複雑な未知の地形に対する接近、接触を繰り返します。そのため、試料採取にいたる動作は自律的に行います。この辺の技術が明らかにされ、採取のテレビ中継が行われる日が楽しみです。

*1:一、二番目はハレー彗星に接近したさきがけとすいせい。三番目は火星探査に失敗したのぞみ

*2:晩年、トンデモ方面に傾いて後進を困らせますが、それは別の話

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