台風19号と神奈川県の貯水量変化に見る治水の重要性

昨晩首都圏上空を通過していった令和元年台風19号"Hagibis"は、台風15号と異なり雨による被害を多く残していきました。昨夜はこの雨をめぐって相模川流域で困難な治水作業が行われたようです。その様子を結果から振り返ってみてみます。

 神奈川県相模川水系

神奈川県は水源を二つの川の水系に頼っています。ひとつは相模川水系、もう一つは酒匂川水系です。それぞれの水系の総貯水量および現在の水量は、こちらのWEBサイトがわかりやすいです。

私は渇水が気になる時期になると、よくこのサイトを見ています。

城山ダムの放水に関するニュース

さて、相模川水系にある人造湖津久井湖』を湛えているのが城山ダムです。昨日から昨晩(2018年10月12日)にかけて、このダムの緊急放流が何度か報じられました。ダムは通常の吐水量が一定になるように調整していますが、調整能力を超えた水が流れ込む場合、制御不能になる前に「流れ込んだ水と同量の水を吐水する」作業を行います。これが緊急放流です。

緊急放流をしない場合、あふれた水はダム周囲の地盤やダムの施設を破壊する恐れがあり、その後の業務(発電、上水供給、治水)が困難になります。最悪の場合決壊するかもしれません。

さて、城山ダム(津久井湖)に関する報道を時系列で追ってみます。

NHKの最初の報道は14時45分です(リンクはすべてツイッター)。この時点で、ダムの現場はこのままいくと5時くらいで調整できる限界になると踏んだようです。

 16時30分に緊急放流が遅れるとツイートされています。なお、WEBページの時刻は17時41分です。ツイートのあとに内容の更新があったのでしょう。ダムに流入する雨の量が想定より下回っているとのことです。

 21時06分に速報があり、延期していた緊急放流を10時から行うと報じられます。

 そして21時33分に、緊急放流を開始したと報じられます。

 日が変わって01時55分(25時55分)に速報があり、01時過ぎに緊急放流を終了したと報じられました。

これをもって、城山ダム(津久井湖)から下流に流れる水量は制御下にもどりました。 この時点で目立った被害の報告はないとのこと。

2018年10月12日夜の雨

昨晩の雨は、気象庁|最新の気象データから見ることができます。データは刻々と変化しますので、スナップショットを張り付けておきます。

 

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2019年10 月12日09時から13日09時までの24時間降水量

相模湖で432.5mm、丹沢湖で419.5mm降っています。相模湖は津久井湖のすぐ上にある人造湖です。

スクリーンショットをもう一枚。Yahoo!天気アプリから、20時15分ごろの雨雲レーダーによる降水量情報です。津久井湖を含む丹沢の山に強い雨が降っていることがわかります雨域は愛川のあたりまで伸びていますが、相川は相模川が通っているところです。

つまり、相模川の流域を集中豪雨が包み込んでいました。

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Yahoo!天気アプリからのスクリーンショット

これらの流域に降り注いだ雨はすべて川に集まってきます。その結果、相模川流域では反乱危険水位を超えたと報じられました。NHKでは午後5時発表の情報をニュースで報じています。

www3.nhk.or.jp

相模川水系貯水量の変化

緊急放水をするべきか、するとすればいつかのか、城山ダムではありったけの情報を持ち寄って検討していたと思われます。

その時、いかに城山ダムが置かれていた状況が過酷だったかは、神奈川県の貯水量の推移をみるとわかります。リンク先は水系全部の合計値ですが、今年はほぼ満水で推移していましたので各ダムの状況は同じと考えていいでしょう。

かながわの水がめ - 相模川水系貯水量

データはアップデートされて消えていきますので、今現在のスクリーンショットを張り付けておきます。

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相模川水系の貯水量変化

薄い青の線は満水量です。6月から10月にかけて満水量が抑えてあるのはこの時期は豪雨の季節であるためです。ダムの後ろに広がる広い山々(神奈川県だと丹沢山系)に降った水が押し寄せてきたときも、この余裕分でため込んでしまえば、下流での洪水を食い止めることができます。

さて、おわかりだと思いますが、赤い印をつけたところが台風19号による増水分です。恐るべきことにたった1日で洪水期のための調整量(20%くらい)を食いつぶしています。そして子細に見れば、相模原水系のダムは台風直撃に備えてあらかじめ放水を行い貯水量を減らしていることがわかります。ということは、実質相模川水系の総貯水量の30%近くの水がこの台風で注ぎ込まれたことになります。

ダム関係者は天を仰ぐような気持だったに違いありません。

まとめ

台風19号による雨は金曜日から降り始めました。その降雨量がとてつもない量であったことは多くの報道で知られている通りです。

神奈川県のダム関係者は平時より行っている洪水期の満水量調整に加えて台風に備えた放水を行い、この台風の襲来に備えました。その降水量は想定をはるかに超えるものだったと考えられますが、それでも大雨にさらされた流域を大洪から守り流域住民に警報を受け取って動く余裕を与え続けたことは、ここに挙げたデータから明らかです。

今朝の城山ダム(津久井湖)の貯水量は145%と発表されています。

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WEBサイト『かながわの水がめ』より県内の貯水状況

www.google.com