『ペンタゴン・ペーパー』

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『ペンタゴン・ペーパー』を見てきました。

言論機関に平気で圧力をかけてくるトランプ大統領に危機感を抱いたスピルバーグ監督がさっと作った映画、と聞かされていたのですが、見てびっくり。映像は美しく、ストーリーは練りこまれ、演技は迫力のあるものでした。

舞台はワシントン・ポスト紙。ワシントン市のローカール・ペーパーでしかない同紙は社を牽引していた社長の死後、遺されたキャサリンが経営を行っています。経営テコ入れのために凄腕の編集者ブラッドリーを呼んで立て直しを図っていますが、株式公開を目前にとんでもない事件が起こります。ライバル紙(と勝手にこちらが思っている)ニューヨーク・タイムズベトナム戦争に関する政府の欺瞞を証明する文書をすっぱ抜いたのでした。違法な公開ではないかと騒ぎになる一方、編集者に対して何としても公開された残りを手に入れろと檄を飛ばすブラッドリー。一方で、キャサリンはその公開が違法である場合に株式公開に悪影響がでること、そして古い友人であるジョン・マンクナマラ元国防長官の経歴に傷をつけることを心配します。

この映画には見どころがいくつもありますが、最も印象的なことは当初キャサリンもブラッドリーもそれほど正義感を発揮していなかったことです。後にタッグを組んでワシントン・ポストを『正しい方向』へと導く彼らですが、当初気にしていたのは株式とN.Y.タイムズの向こうを貼ることばかりでした。

それがある時点から変わります。度重なる「違法入手ではないのか」「司法から訴えられるのではないのか」「ベトナムの兵士を危険に晒すのではないか」という激論をくぐるうち、彼らは『新聞記者や新聞社の経営者が政治家と友達付き合いをする日々は終わった』と気づきます。

「出版の自由を守る方法はひとつだけ。出版することだ」

というブラッドリーの言葉は、トランプからプレッシャーをかけられる言論界へのスピルバーグの檄文でしょう。

素晴らしいストーリーと演技を楽しむことができる一方、活版印刷技術の美しくもダイナミックな姿が映像化されており、その点でも楽しい映画でした。