『ゴッホ 最期の手紙』

ゴッホを題材にした映画『ゴッホ 最期の手紙』を観てきました。

この作品は一旦俳優の演技を撮影した後、油絵で描き直した物をコマ撮りするという気の遠くなるような作り方をされた作品です。この話だけ聞くと奇をてらった映画に感じますが、全編にわたって息を呑むほど丁寧な絵作りと、終盤に向かっての観る者をぐいぐいと引きつけるストーリーがすばらしく、あっという間の2時間でした。

 

話はゴッホの死後から始まります。生前に手紙魔だったゴッホの手紙を配達していた郎郵便夫は主人公である息子に、ゴッホの死後発見された手紙を宛先であるゴッホの弟に届けるよう言いつけます。

「喧嘩が強い以外に取り柄が無い」

と自他共に認める主人公は、すぐに宛先のゴッホの弟もゴッホ自身の後を追うように死んだことを知ります。仕方なくゴッホの弟の未亡人に届けようとする彼ですが、やがて彼はそれまで自分が知っていたゴッホと、彼に関わった人から聞くゴッホの姿がまるで違うことを知ります。それどころから、人々がそれぞれ勝手なゴッホの姿を語るのを聞くにつれ、彼は引き寄せられるようにその真の姿を知ろうと迫っていきます。

私は映画のストーリーが好きになれないと、どれほど絵が良くても駄目です。その点、この作品はストーリーも絵も文句の無い作りでした。

中盤まで主人公と供にゴッホの真の姿に迫っていく観客は、しかし終盤になってから漸くこの作品のテーマと向き合うことになります。挫折を繰り返した少年期から青年期。何者でも無い自分への嘆き。無条件で支援してくれた弟への思いが綴られた厖大な手紙。後に美術史に強烈な印象を残しながらも、生前1枚しか売れなかった絵。

絵に対するひたむきな情熱と、弟の間の強い家族愛。

これらが印象的な油絵の中で描かれる大変贅沢な作品でした。正直、なんどか目頭が熱くなりました。

大変素晴らしい作品です。そろそろ上映が終わるところも有るでしょう。ぜひ、今のうちに大きなスクリーンで味わってください。