外国と電話会議をする場合のちょっとしたヒント

長いこと外資系技術企業のFAEとして働いています。
これまで数多くの電話会議に参加し、(こうしたらいいのに)と思う事も多々ありました。そこで、この経験がいくらかでもどなたかの役に立てばと、自分なりの電話会議のこつを書くことにします。ここに書くのは「技術系外資企業と日本企業の電話会議で、外資企業日本オフィスのFAEが立ち会う場合」の経験に基づくものです。個人的経験ではありますがその中で普遍的だと思うものを取り上げます。
なお、ここに書くことはどなたかの、あるいはいずれかの企業への批判ではありません。私の実名を知っていて、自分のことが言われていると思う人も居るかも知れません。しかし事実は、長い間違う人達によって繰り返されてきた事から学んだ事でしかないのです。

会議の大前提

会議を始める前に必ず肝に銘じておくべき事があります。

  • 会議の目的(落ち着くべき結論)
  • 会議の相手
  • 自分が話し合いの相手であると知らせる

営業職にある人にとっては当たり前のことなのですが、多くの技術者がこれをきちんと考えずに会議に臨み、時間を無駄にしています。
以下の話は、この大前提に基づくものです。

会議の相手が誰かを意識する

会議の相手が誰かきちんと意識しましょう。
相手が誰かを知るというのは、名前はもちろんですがその人の機能を理解することです。日本企業の存在感が低下したとはいえ、日本オフィスを持つ企業の海外担当者がわざわざ電話会議に応じるのですからそれなりの問題が起きており、相手先でも問題視されているということです。そういう会議には『問題を解決する上でのキーマン』が出てくるはずです。それが誰かをきちんと認識しましょう。普通は日本オフィスの社員に聞けば教えてくれます。
これも営業職には常識ですね。

自分が話し合いの相手であると知らせる

これが多くの場合出来ていません。
上に述べたように、わざわざ電話会議をするような状況ではキーマンが出てきます。彼らも問題を解決したくて困っているのです。その際、日本側の誰に話をすれば問題が解決するのか、相手に知らせることが必要です。
これが簡単ではない事はわかります。たとえば現場でいつもバリバリ働いてリードしている社員が、実は問題解決の決定権を持っていないことが多くあります。こういった場合、話し合いの相手が(誰に話しても問題が解決しない)と匙を投げることがありえます。
たとえばあなたが管理職の場合、会議の前に
「担当者のxxはよくご存じかと思います。彼が仕切っていますのでほとんどの問題が彼が解決できますが、彼に判断が付かない場合は私が判断を下すことになります」
位は紹介した方が良いでしょう。

相手も問題を解決したがっている

問題が無いのに電話会議が開かれることはまれです。そして問題が何であれ、相手も問題を解決したがっています。それを理解しましょう。
たとえば、外国企業の製品の不具合で日本企業の生産がおくれているとしましょう。これは、日本企業からすると「どうでもいいから早く修正しろ!」ということになるでしょう。しかし、相手も実は問題を抱えているのです。つまり、日本企業が生産をしないと、製品供給側はお金が入ってきません。ですので、こういった問題の解決は双方にとって win - win です。問題解決は双方が願うことです。
ですので、一方的に要求を突きつけないで、あるいは困った困ったと言わずに、何を譲歩できて何を譲歩できないかはっきりとリストとして提示しましょう。全部を即座に解決できなくても、部分的に必須事項を満たすことが出来るかも知れません。
そういった判断のために、双方のキーマンが出席しているとも言えます。

自分に相談すると得だと思わせる

ペテンにかけるわけではありません。証明してみせるのです。
「あの人に相談すれば何とかなる」
と、相手が理解すれば、中長期的に話が通りやすくなります。

通訳に話しかけるな、通訳と交渉するな

ここに挙げた例では、日本オフィス社員が通訳を行うことがあります。このとき、つい気安さから日本社員に話しかける人が多く居ます。
しかし、あなたが日本社員に話しかけている間は、海外の相手はつんぼ桟敷に置かれていることを忘れないでください。しょっちゅうそういうことが起きるようだと、相手のキーマンは
「時間の無駄だ」
と感じることになります。繰り返しますが、交渉相手は日本オフィスではありません。日本オフィスで解決できるなら海外との電話会議は不要です。電話会議の結果、相手から自分の会社の優先順位を下げられるようなことをしてはいけません。
一つの手法として、通訳を通す場合は必ず話相手の名前を呼ぶようにしましょう。日本語がわからなくても、(相手の日本人が自分に話しかけている)と外国人にも理解できます。そして次に通訳されてくる内容に注意を払うことになります。
余談ですが、直接会って会議をする場合もこの事情は同じです。同席した通訳に話しかけないでください。話相手である外国人の目を見て日本語で話すようにしてください。

通訳にメモを取らせるな

二つの意味でばかげています。
一つは、通訳もメモ取りも単純作業ではありません。それ自体が頭をフル回転させるべき作業です。メモ取りを命じるのは通訳に対して社会的優位性を示す以外の効果はありません。通訳の品質を下げて会議の妨害をしたいなら別ですが。
もう一つ、会議の記録を取る人は会議の結論をコントロールできます。コントロール権を相手に渡してはいけません。日本オフィスの社員を敵視する必要はありませんが、自社の運命を他社にゆだねてはいけません。
こういった話も営業職に就く方にとっては常識ですが、技術畑のひとは理解が甘いようです。

どうでも良いことに時間を割くな

先にも書きましたが、解決すべき問題が多くの周辺問題を含む場合には優先順位を整理してください。
些細な問題は
「メールのやりとりで話し合いましょう」
と一言で済ませましょう。優先順位付けをすると相手の好感度があがりますし、会議が重要だと認識して集中力を発揮してくれます。日本人にとってEXCELのアクションアイテムの確認が大事でも、相手にとっては(次回から出なくていいや)と思われかねません。

Excelを押しつけることが得策か、一歩下がって考える

みんな大好きExcel進捗管理
しかし、今や大抵の会社ではきちんとしたチケット管理システムを導入しています。賭けてもいいですが、海の向こうではあなたのスプレッドシートの行番号は把握していません。たいていの場合、その面倒な突き合わせをやっているのは日本オフィスの社員です。ですから、Excelの行番号を電話会議で言っても無駄です。ついでながら、同じ理由で『問題の名前』を相手に言っても通じない場合が多いです。あなたが思っているより多いはずです。そりゃそうですよ。どうして日本オフィスの社員が毎回正確に同じ言葉で翻訳・通訳できると思うんですか?
日本オフィスの社員と事前に話し合うなどして、双方の問題管理番号の共有をするなどした方が良いでしょう。
ついでながら、私はExcelに書き込んで返信するのが大嫌いです。二つのチケット管理システムの間でコピペしながら翻訳することを好きな人が居るとも思えませんが。ましてやパスワードなんか…。

デスクトップ共有を使う

今時の外資系技術企業は、みな何らかのWEB電話会議システムを契約しています。
なるべくそういうシステムを使う方が良いでしょう。何しろドキュメントを見ながら話をすることができます。これはほとんどの人が考えているよりもはるかに生産性が高くなります。ところで、ごくまれに
「セキュリティが厳しくて使えません」
という方がいらっしゃいます。そういうときこそ管理職を使ってIT部門に仕事をさせましょう。社員が効率よく仕事をするための環境を整えるのは、管理職の重要な仕事です。

まとめ

電話会議のこつを書きました。
書いてみれば常識的な話でしかないのですが、実際に実行できる人はそれほどいません。問題の早期解決は双方が望んでいるにもかかわらず、コミュニケーション不足がそれを阻害することが、ままあります。早く解決すれば残業も心労も減り、良いことばかりです。
ここに書いたことが少しでも役立てば幸いです。