両親が危うくオレオレ詐欺にひっかかるところだった

先日の台風がかなりの被害をもたらしたこともあり、急遽九州に帰省しました。ところが、被害がなくて一安心していたところに、母がこう切り出しました。
「それがまた、心配事が増えたんよ」
「なんね」
「Aがお金に困っとるち言いよるんよ」
Aは弟です。うそやん、あいつ国家公務員やし。うまい話につられて損するほど腰の軽い男じゃないし、女にたぶらかされでもしない限り借金なんかこさえませんよ。
「それが、変な電話がかかってくるとかいって携帯電話の番号変えるとか、銀行に借金断られたとか、もうわからんのよ」

それ、詐欺です

ここまで聞いたら100%断言できますが、それは詐欺です。
「本当にAやったんね?」
「それがなんか声が違うごとあって、それでなんかわからんけど銀行が貸してくれんち言うんよ」
以下、状況をまとめます。

  1. 数日前「出張する。帰ってきたら顔を出す」と電話があった。
  2. その後(26日)、「携帯電話に変な電話がいっぱいかかってくるようになった。携帯電話の番号を変えるかもしれない」と電話があった。Aの声かどうかは覚えていない
  3. 金曜日朝、「銀行がお金を貸してくれなくて困っている。急いでお金がいる」と電話があった。声がおかしいように思う。「9月に帰るち言いよったやろ、そのとき話を聞かせなさい」と返事。

現在、ここまでです。オレオレ詐欺です。
私から見たらオレオレ詐欺なのですが、そもそも病気を何十年も患い、この夏の暑さでだいぶ痩せてしまった母は、これだけでもう、心痛のあまいりまいっているような顔をしました。
とにかく、
「これはオレオレ詐欺だから」
と、噛んで含むように説明しました。
「お金に困っているのは嘘。それは詐欺師が言っているだけ」
「すぐにお金がいるというのも嘘。『すぐ』と言って、考える時間をなくそうとしている」
「携帯電話を換えるのも嘘。それはAと遮断するため」
母親のほうはだんだんと理解できたようで、最後はAの困窮そのものが架空の話と知って、よかったと胸をなで下ろしていました。
「今度電話があったら、『お金の話はうちに来て言いなさい』ち言うて電話を切るんよ」
と重ねて言い含めました。

確認

しかし、私のほうはまだ引っかかるものがあります。
まず第一に、対策は単に電話を切るだけで良いのか。私が居る間に再度電話がかかってくれば私が応対して「警察に連絡したよ」と言えば済みます。しかし、ずっと実家にいることも出来ませんし、素人考えで見落としがあるかもしれません。母親がこちらの情報を話しすぎている事も気になります*1
そこで、警察に相談してみました。県警が相談用電話窓口を用意しています。
結論を書くと、対応として
「金の話は会ってからじゃないとしない」
と言って切ることは正解のようです。歯がゆい話ですが、現時点では事件になっておらず、それ以上は動けないでしょう。長話をすれば丸め込まれますし情報が漏れますのでとにかく電話を切る。
もうひとつ、Aにも電話しました。
「田中さんですか?」
「…いえ、Aです」
携帯電話が盗まれた事まで考えて一芝居打ちましたが、よく考えたらコーラーIDが表示されますので意味がありませんでした。
とにかく、ここ数日電話したのは台風の時だけとのこと。出張は事実、9月帰省も事実。携帯電話買い換え予定なし。金には困ってない。これではっきりしました。

手口

全貌が見えたところで、相手の手口もわかってきます。

  • 電話番号が変わると臭わせる
  • お金に困っていると臭わせる

これを時間をかけて行っているわけです。母はAの事を心配します。心痛で疲れて判断力が弱ったところで、電話番号が変わったと言う気でしょう。いったん嘘の携帯電話番号を教えてしまえば、「前の電話から変な電話がかかってきても取るな」と言うことが出来ます。そしてじわじわ追い込んで、最後に母に「じゃあ送金する」と言わせる気でしょう。母から送金したいと言わせたら、銀行窓口で警察官が止めようとしても振り切って送るかもしれません。
相手は両親が二人暮らしである事、我々子供が別居していること、Aの名前。こういった情報は全部相手に把握されています。おそらく、Aの家族構成と私の家族構成も知っているでしょう。その上でゆっくりと欺しにかかっていたのです。

誰でも被害者になり得る

両親とも「私はオレオレ詐欺にかからない。電話でお金の話なんかしたら、『私の息子は電話でそんな話はしません』と言う」と笑い飛ばしていましたが、実際にはこのていたらくです。子供の困難に心を痛めることしか出来ていませんでした。
全部の真相がわかったあとも、
「Aがお金に困っていなくて良かった」
という晴れやかな笑顔があっただけです。詐欺師に対する怒りも見せませんでした。
結局、体が弱り、心が弱ってしまっても最後に子供への愛だけが暖かく残っているさまをまざまざと見せつけられました。今回の件を未然に防ぐことが出来たのは、偶然私が帰省するタイミングが良かったからです。欺されて金をむしり取られても不思議はありませんでした。そうすれば、犯人に怒るでもなく、自分の愚かさを嘆くでも無く、ただ、子供達に申し訳ないと泣いたのでしょう
誰が悪いのかと言えば、滅多に実家に連絡を入れない私が一番悪いのです。そういうことを考えた帰省になりました。

*1:9月帰省予定とか