氷菓

先日、米澤穂信古典部シリーズを紹介したのですが、読み返してあまりの稚拙さに自分でも嫌になってしまいました。もう少しましな文章を書かんかい、と自戒を込めて、改めて紹介します。

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

主人公の折木奉太郎は高校1年生。進学に当たり、高校では何も積極的にせずのんびり静かに省エネ高校生ライフを過ごそうと決め込んでいます。彼はバラ色の高校生生活には関心はなく、自分の生活は灰色一色の静かなものでいいと考えています。しかし、波風を嫌う彼と対局にあるスーパー女子大生の姉から一通の国際郵便が届いたため、彼は廃部寸前、活動内容不明の「古典部」に入部することになります。それでも、たった一人の部活だし、プライベート・ルームが学校にできるようなものだからと思っていたのですが…。
氷菓はこの作者のデビュー作であり、後に人気となる「古典部シリーズ」の第一作でもあります。何事に対しても積極的な関心を持とうとしない折木奉太郎。彼のプライベート・ルームの夢は同学年の千反田える*1が入部してきたことで、儚くも初日から露と消えます。それどころか、彼女は名家のお嬢様らしからぬ好奇心で彼を振り回すことになります。
わたし、気になります
古典部シリーズでは、警察沙汰になるような事件は起きません。基本的に学校内部で起きる日常的な謎を扱った作品ということになっています。
主人公は日常の謎だろうが世界を揺るがす謎だろうが関心を持っていませんが、いつもいつも悪いタイミングで千反田さんが好奇心を小爆発させるため、否応なしに謎に首を突っ込んでは解決する羽目になります。そうするうちに、この作品の骨格となる「氷菓事件」に引き込まれるてしまいます。
警察沙汰になるような事件が起きないかわりに、このシリーズでは高校生が直面する、青春時代ならではの気持ちがサブテーマとして効果的に使われています。シリーズ第一作では主人公が冒頭のモノローグで無造作に退ける「バラ色の青春」がいくらかの苦みをともった形で描かれています。
続く長編「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」ほどミステリで読ませるわけではない本作では、この青春の苦みが幾分濃いめに出ています。
私自身はミステリはあまり読まないため、この作者のミステリライタとしての手腕は分かりません。謎解きという点ではズルが過ぎると素人でも感じる点があります*2。また、主人公があまりにも老成しているなど気になる点もあります*3
しかし、一気に読ませる文章力や登場人物のキャラクター設定のうまさには疑いを差し挟む余地はありません。続編のおもしろさも加えた上で、お薦めできる作品です。

*1:角川のミステリ向けライト・ノベル文庫に収められたせいか、主人公とヒロインの名前が素っ頓狂

*2:姉がずるすぎる

*3:短編集では20代後半に思えるような所もあります