「ガラパゴス」という名前

新幹線で移動中にレポートを書こうとしていたら、天から目をそらしたくなるような、でも、無視するにはあまりもアレなニュースが降ってきてしまいました。

シャープは、電子書籍端末とサービスを提供する「GALAPAGOS」を12月より開始する。Android OSを採用した通信対応の専用端末を発売し、同時に新聞、雑誌、書籍など電子書籍コンテンツの提供を3万冊からスタート。

よりによってその名前。大方の第一印象は「それはギャグで言っているのか」というところでしょう。

名が体を表していない

おそらくはDoCoMoなどのキャリア主導で進んだ結果、世界で広く使われている携帯電話と真っ向勝負できないほどひずんでしまったことを揶揄して「ガラパゴス・ケータイ」なる言葉が使われていることに対する開き直りだと思います。一部の人が言っているように、「ガラパゴスの生き物はガラパゴスという地域に適応しているのだから、ガラパゴス・ケータイが必ずしも恥ずかしいわけじゃない」ということなのかもしれません。まぁ、日本向けコンテンツを供給してiPadにできないことをアピールするつもりはあるようです。この際、海の向こうから来た本屋さんであるAmazonでも日本語の本が買えることは突っ込まずにおきます。
そんなことより、恐るべきはその特設サイトです。そのうち改善されると思いますが、ここは「ひょっとして専門学校の学生につくらせたんじゃないか?」と思うほど何もありません。ガラパゴスという名前が想起させる生物多様性などとはまったく無縁です。なんかもう、これだけ寒々しいならいっそノヴァヤゼムリャとかにしたほうがぴったりだと思うのです。

相変わらず自由を感じさせない

アップル嫌いの私ですが、アップルのイメージづくりのうまさは認めています。彼らは新機軸を打ち出す時に「ああ、これがあればもっと自由になれる」と思わせることが非常に上手です。新製品が出るたびに、ユーザーはこれがあればあれができる、これができるとウキウキします。Macintoshを発表した後、Jobsは動物の移動効率のたとえ話をし、人類がいかに移動効率の悪い生き物かを説明したそうです。そうして、自転車に乗れば人類も動物界随一の移動効率を持つことができると述べ、「Macは知的自転車だ」と言ったとか。この言葉はメーカー側の言葉ですが、Macintoshが発表されたときに多くの人が期待したことを一言で言い表しています。
一方で、3万冊の電子ブックサービスの端末であるガラパゴス端末からは、そういうウキウキするものが一切伝わってきません。進化する知性だそうですが。

方向性は正しい

意外に思われるかもしれませんが、それでも私はこの方向性は正しいと思っています。発売ありきで考えるなら「似たようなAndroid端末が大中国様からポコポコ出てくるのだから、素っ頓狂な名前で差別化するしかない」という戦術は正しいものです。というか、それしかないでしょう。
まぁ、最初に書きましたが「ガラパゴス・ケータイ」という言葉自体、外来種と戦ったらひとたまりもなく駆逐されるという揶揄なわけで、いくらなんでもそんな名前を付けるなんて、どういうつもりかと思わないでもありません。
それでもまぁ、「外来種に食い散らかされて死んでいくことまで織り込み済みです」っていうのなら大したものです。いや、ひょっとすると政府から守ってもらうつもりかもしれません。

よりよい名前を考えてみる

ま、名前で勝負するしかないという方向を認めるとして、やっぱり進化論関係の解説書を好んで読んだ身としては、この名前は使ってほしくないです。そこで代わりの名前を考えてみました。
そもそも「ガラパゴス」ってのは外来種に弱いよという揶揄です。ガラパゴス諸島に棲む動物はその環境に特化していますが、だからといってガラパゴスという土俵なら最強というわけではありません。たとえば野犬が増えれば大打撃をくらう生物はたくさんいます。そんな名前は市場に打って出るには開き直りであってもあまり適切ではありません。
ここはひとつ、「それまで人類が知られずに生きていた強い生物」の名前を付けてみてはどうでしょう。「エボラ」なんて、端末強そうでいいじゃないですか。接触してきたiPadユーザーが次々に血を吐いて倒れていくような力強さを感じます。世界の人々が震えあがるような端末になりそうです。貿易障壁ってのは自分でつくるのではなく、相手に作らせるくらいじゃないと強い国家とは言えません。
もうちょっと行儀のよい名前がいいというのなら、私は「EN」を提案します。円、艶、炎、宴、縁、援。美しく、強く、楽しく、つながる、われわれを助けてくれそうなガジェットを思い浮かべませんか?英語でもen-rich, en-lightment, en-ableと、いい言葉があります。
マイクロソフトが最キャンセルしたプロジェクトへの回しな揶揄でもあるんですけどね。