1,2 私たちの田村くん

結局今年もやりますよ、乱読シリーズ。正直言って私の読書の方向は決して格好良くないので、ある意味露出狂的な悪趣味かもしれません。
去年と同じく対象は「読み物」ってことで。
さて、第一段。

わたしたちの田村くん (電撃文庫)

わたしたちの田村くん (電撃文庫)

わたしたちの田村くん〈2〉 (電撃文庫)

わたしたちの田村くん〈2〉 (電撃文庫)

いきなりラノベかよ>俺。
甘酸っぱいラブコメです。以上。というわけにもいかないですか。
主人公の田村くんはごく普通の中学三年生。いや、あえて言えばクラスの中の恋愛ネットワークから隔離された、点在する陸の孤島的モテない男子生徒の1人です。その彼が夏休み前に一念発起して、なぜか同じくクラスのネットワークから浮いている松澤さんに猛烈なアプローチを開始するところから話が始まります。しかし、松澤さんにはクラスから浮いている理由があって…というお話。
いくつか気にかかる点があります。一つは、主人公の田村くんが類型的なこと。「勉強はできないけど、困っている人を見たら放って置けない」という、あまりにありきたりな性格設定には、さすがにちょっとなぁと思ってしまいます。「化物語」のあららぎ君もそうでした。「バカとテストと召喚獣」の主人公も近い感じがします。
もう一つ、ヒロイン二人と田村君が急接近するきっかけが、いずれも女の子がひた隠しに伏せている弱点に田村くんが触れる、という点であること。これも言ってみればゲーム的な類型性を感じてしまいます。
こういった引っかかる点があるとはいえ、ストーリーのおもしろさにはこれらを差っ引いても十分見るものがあります。とくに主人公である田村君が中学生的な無思慮からくる突拍子もない行動力に任せて走った後、ぶち当たった壁の前で自身の能力の低さ、決断力の弱さ、人の心に対する思いやりの浅さを、血が滲むほど噛み締める展開は実にすばらしいです。のちの作品である「とらドラ」にも同じような展開がありますが、この作者は子供を万能に描かないため、作品中で主人公の前に現れる壁の大きさが引き立ちます。
さて、上で書いた登場人物の類型性ですが、主人公が類型的すぎることはおそらく作者も十分わかっています。というのは、ヒロインの1人である相馬さんにその点を手厳しく指弾させているのです。その上で、「だけどそんな性格でよかった」と言わせている点は印象的でした。執筆前からこういう性格の主人公が多いこと、それらが物語のリアリティの中でどういう影響を与えるか考えていたのでしょう。「とらドラ」では脇役の1人の春田くんがこういう性格で、要所要所で困っている友人(男)に手を差し伸べるシーンがあります。
脇役の大人を無能者として描かず、主人公達にとっての制御不能なファクターとして描くところもこの作者の特徴でしょうか。
登場人物が恋愛をゼロサムゲームとして受け取っているため、三角関係が心地よいぬるま湯として成立する余地がありません。その点も特に後半分の緊張感を維持しつづけるいい要因として働いています。
「バカと…」のいい口直しになりました。
おすすめ。