56 57 燃えよ剣

12、3年前のこと。
2度目の北海道ツーリングは、函館に列車で上陸後、襟裳岬を通過して白糠付近で一泊、釧路を抜けて中標津の開陽台キャンプ場に連泊しました。北海道東部の雄大な平野を堪能しましたが、なにしろ長い休みだったので途中で洗濯が必要になります。ある、雨の日、中標津の街に出てそれまでの洗濯物を全部コインランドリーに放り込むと、さて、空き時間。
なにしろこういう男ですので洗濯から乾燥まで1時間をコーヒーの香りを楽しむ、といった余裕のあることができません。そのまま本屋を探すと、思いつきで司馬遼太郎でも読むか、と本棚に向かい、手に取ったのがこの本でした。2ヶ月で40冊に渡る私的司馬遼太郎ブームの幕開けでした。

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

江戸郊外の日野に生まれた「歳三」は、盟友の近藤勇らと上京し、新選組を結成します。京都守護職松平容保の下で京都の治安維持に乗り出した新選組は、京都のあちこちで血煙を巻き上げながら倒幕浪士を狩り始めます。
新選組副長、土方歳三を政治に関心の無い「喧嘩屋」として描いたこの小説は、政治性が無い故に土方が自ら作り上げた新選組を純粋な戦闘集団にすべく腐心する様子を、活き活きと描きます。農民として生まれた故に痛烈な士道への憧れを抱き、純粋な武士たろうとする土方ですが、京都を中心に旋回する幕末の激動は、新選組を朝敵の側に押しやり、やがて土方たちは担ぐべき幕府無きまま北へ北へと戦場を移していきます。
あらためて読み直して見ましたが、やはり、おもしろいの一言につきます。新選組のトップであり、華のある近藤ではなく、事実上新選組を切り盛りした土方に光を当てることで、純粋で痛快な小説に仕上がっています。

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